生活の場であり、資産でもある「不動産」。「一生に一度の買い物」と表現されることがあるほど、その購入は多くの人にとって一大イベントだ。一方で、中には杜撰すぎる建築がなされ、購入した人に絶望を与える物件も――。
7月に『炎と水 中村哲と名もなき人たちの旅』で第48回「講談社 本田靖春ノンフィクション賞」を受賞した作家・山岡淳一郎氏の新著『マンション 狙われる修繕積立金 談合・なりすまし・外部管理者』(平凡社新書)から、「史上最悪の欠陥マンション」と呼ばれた東京・八王子の「ベルコリーヌ南大沢」のケースをお届けする。
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都市整備公団が生み出した「史上最悪の欠陥マンション」
建物の欠陥は施工不良によって生じるが、その背景にはさまざまな要因が絡んでいる。
「史上最悪の欠陥マンション群」に私が初めて足を運んだのは、2005年早春だった。その日、東京の京王線新宿駅から特急に乗り、40分ちかく揺られて、八王子市の南大沢駅で降りた。跨線橋を北へ渡って、線路沿いに桜並木を西へ7、8分歩くと、丘一面に低層の集合住宅と、高層の屋根に尖塔がついたマンションが立ち並んでいた。
A~Fの6つの団地、全46棟・919戸からなる「ベルコリーヌ南大沢」だった。
建物の壁は薄桃色で、南欧の街を想わせたが、近づいていくと「ガガガガッ」と耳をつんざくようなコンクリートを砕く音が響いた。「安全・安心」を売り物にしてきた公団住宅の信用が崩れる音でもあった。
多摩ニュータウンのベルコリーヌ南大沢は、バブル末期の1989年から92年にかけて、住宅・都市整備公団(現・UR都市機構)が分譲した大規模団地である。「ポスト・モダン(脱近代主義)」を合言葉に、建築家の内井昭蔵(1933~2002)を「マスターアーキテクト(統括建築家)」に起用して、尖塔や複雑な形状の建物が連なる団地群がつくられた。1990年度には日本都市計画学会の「計画設計賞」を受賞している。
竣工後も建築家を志す若者や行政の関係者がひっきりなしに見学に訪れた。
しかし、住民が入居して間もなく、ポチョ、ポチョ……とマンションの至るところで雨漏りが発生していた。
