ある棟では全世帯の3分の1が雨漏りに悩まされ、業者が検査をすると杜撰な工事がなされたことが明らかに――都市整備公団(現UR)が作った「ベルコリーヌ南大沢」は、かつて「史上最悪の欠陥マンション群」と呼ばれた。

 最終的に全46棟のうち20棟を建て替え、残り26棟も大規模な補修せざるを得なかったという衝撃的な事態はなぜ起こったのか。7月に『炎と水 中村哲と名もなき人たちの旅』で第48回「講談社 本田靖春ノンフィクション賞」を受賞した作家・山岡淳一郎氏の新著『マンション 狙われる修繕積立金 談合・なりすまし・外部管理者』(平凡社新書)から一部抜粋してお届けする。

史上最悪の欠陥マンション群と呼ばれた、ベルコリーヌ南大沢。住民への慰謝料などを含め、総額で800億~900億円の費用が生じたとされる(UR公式サイトより、写真は建て替え・改修後のもの)

◆◆◆

ADVERTISEMENT

史上最悪の欠陥マンション群を生んだ「2つの要因」

 なぜ、これほど重大な欠陥が、大量に生じたのか。

 その直接的な原因は、「工期の短さ」と「寄せ集めの建設会社による野放図な施工」に集約される。

 まず、「工期の短さ」をみてみよう。通常、団地を建設するには、土地の取得から設計、各種認可、着工、竣工まで「5年」程度の期間をかける。

 ところが、ベルコリーヌ南大沢は半分ちかくの「3年」で竣工にこぎつけている。

 O社が「建物診断」をしたA団地は、基本設計と実施設計の期間が7か月しかなく、着工後、わずか1年で竣工し、分譲されている。公益社団法人日本建築士会連合会は、基本設計に4.5か月、実施設計に8.5か月、合わせて12か月の期間が必要と示している(「適正な設計期間の確保」)が、まったく足りていない。

 これほど短期間に設計、施工したのは、公団に土地を売った東京都の「譲渡から3年以内に指定された用途(団地)の建物を竣工させること」という条件に縛られたからだ。

 そもそも東京都が南大沢一帯の土地を買収したのは1970年ごろだった。

 鈴木俊一氏が知事に就いた東京都は、1980年代に入ると、多摩ニュータウンの「多機能複合化」を掲げ、目黒区と世田谷区にあった東京都立大学のキャンパスを南大沢に移すと発表した。政府も「多機能複合化」に呼応し、法改正をして多摩ニュータウンへの「企業誘致」をサポートする。

 1991年から朝日生命、東京海上火災保険、ベネッセコーポレーション(旧・福武書店)などが本社や、計算センターを多摩ニュータウンに移転させた。都立大の新キャンパス開設に商業施設の開業も連動した。そのタイミングに合わせて、都は塩漬けにしていた土地を公団に払い下げ、前述の「3年以内の竣工」を条件づけたのだ。

 住宅の建設ラッシュで、地元の八王子市は、小中学校が飽和状態となり、悲鳴を上げていた。公団は「待ったなし」の土地譲渡を受け、短期間の団地建設に突き進んだ。