2005年、ある建築士が偽装によって耐震基準を満たさないマンションを建てていたと明らかになり、世間を騒然とさせた。
被害に遭ったのはマンションとホテルを合わせて全21棟。このうちマンションを購入した人は自治体から退去を強いられ、新たな住まいのために二重ローンを背負ったことで自殺未遂や離婚に追い込まれたケースもあるという。周囲から「殺人マンション」とささやかれるなど2次被害も出た。
7月に『炎と水 中村哲と名もなき人たちの旅』で第48回「講談社 本田靖春ノンフィクション賞」を受賞した作家・山岡淳一郎氏の新著『マンション 狙われる修繕積立金 談合・なりすまし・外部管理者』(平凡社新書)から一部抜粋して、当時の住民たちのようすをお届けする。
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世間に衝撃を与えた「耐震偽装マンション事件」の裏事情
耐震偽装事件は、2005年11月17日、国交省の記者発表で表面化した。南大沢の被害が大きな20棟の建て替えが決まって1年も経たないうちに、またマンションの欠陥問題が発覚し、大きな波紋を呼んだ。
この日、国交省は、A元一級建築士が構造計算書を偽装し、耐震基準を満たさないマンションが20棟、ホテル1棟の計21棟が建てられたことを公表した(その後、被害棟数は拡大)。耐震偽装された建物の構造計算をやり直した結果、「震度5強程度の地震で倒壊する恐れがある」と強い表現で、建物の危険性を強調した。
被害を受けたマンションの住民は、自治体の避難勧告を受けて退去を強いられた。その数は、『構造計算偽装問題に関する緊急調査委員会報告書』(2006年4月)によると〈506戸〉。1200人以上に及んだと推定される。避難した住民たちは、行政に建て替えへと誘導され、二重ローンを背負う。離婚や自殺未遂へと追い込まれる人もいた。
