偽装を見逃した公務員と国は罪に問われず……

 偽装を見逃した確認検査機関イーホームズの審査担当者10人は、全員が自治体で確認検査業務に携わった公務員OBだった。多くの天下り職員を抱え、国土交通大臣が資格を与えた確認検査機関が機能しなかったのだから、その責任は国にも及ぶと考えられた。

 当初、国交省と検察は、マンションを開発、販売したデベロッパーのヒューザー(のち倒産)と建設会社、建築士が結託してコスト削減のために偽装をおこない、イーホームズがずさんな検査で、これを見逃したという筋書きで関係者の身柄を拘束した。

 私も、そうしたストーリーに引きずられ、デベロッパー悪玉論に与した。

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 だが、警察の取り調べが進むにつれて、A元一級建築士が個人的に「お金をかせぐ(仕事を取る)」ために偽装をしたことが判明し、共謀性は否定される。いまとなっては、自分の不明を恥じるほかない。A元一級建築士は建築基準法違反で懲役5年の実刑判決を受け、検察の見立ては崩れた。

建築士は、個人的に金を稼ぐために偽装をはたらいたという ©mapo/イメージマート

 しかし、建築士以外の関係者も逮捕、起訴される。ヒューザーの社長だった小嶋(おじま)進氏は「詐欺罪」を適用された。神奈川県藤沢市の偽装マンションの安全性が確認されていないにもかかわらず、偽装を知った後の05年10月28日に購入者11人に部屋を引き渡し、代金4億円あまりを騙し取ったとして懲役3年、執行猶予5年の一審判決を受けた。小嶋氏は、最高裁まで争ったが、上告棄却されて刑が確定している。

 他方、偽装を見逃した公務員OBや建築主事、国の責任は司法の場で問われなかった。かかわった民間企業の多くが倒産に追い込まれ、ヒューザーも潰れている。

 国は、大急ぎで建築基準法を改正し、建築確認・検査の手続きを厳格化した。やがて、メディアの取材攻勢も潮が引くように終わり、世間の事件への関心は薄れた。

 そうしたなか、建築行政の理不尽さとぶつかり、生活を再建しようと四苦八苦していたのが、ほかならぬ被害住民。耐震偽装事件に巻き込まれ、突然、マンションからの退去を余儀なくされた人たちだった。


 続く記事では、耐震偽装マンションを購入した人たちを襲った周辺住民たちによる非難や、事件のその後についてまとめています。あわせてお読みください。

次の記事に続く 「さっさと解体しろよ!」子どもたちは“ギソウ”と呼ばれ、いじめられ…“耐震偽装マンション”を買ってしまった人たちを襲った「残酷すぎる2次被害」

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。