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「安倍3選」の泣きどころ 産経も揺れたプーチン“アドリブ攻撃”で露呈した「総理の弱点」

モリカケを始末できていない政権は、何ができるのか

2018/09/21

日露マスコミの論評と、日本政府の認識の「激しいズレ」

 さっそくロシアでは、

《露紙「コメルサント」は13日、領土問題を解決させずに結ぶ平和条約は「日本側にとって無条件降伏」と論評した》(読売 9月14日)。

《ロシアメディア分析 「経済協力成果上がらず不満」「領土期待与える芝居やめた」》(東京 9月14日)

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 と報じられた。

官邸HPより

 日本の新聞でも、

《プーチン氏との個人的な関係を強調し、ロシア接近を図ってきた首相ならこの発言でも対ロ関係を悪化させるリスクは低いと踏んだ面もあるだろう。》(日経 9月14日)

《自民党総裁選で再選後の北方領土問題解決に意欲を見せる首相の熱意を逆手にとってプーチン氏は危ういボールを投げ返した。》(東京9月13日)

 日露どちらの論評を見てもプーチン氏にいいようにやられたように見えるが、しかし政府は今回のプーチン発言を「プーチン氏の平和条約に対する意欲の表れ」という認識を示している。この違いすごい。

産経が安倍首相に小言するほど動揺してる

 それにしてもこのニュースを知ったとき、なんという皮肉なのだろうと思った。

 というのも今回のロシア訪問は「総裁選がらみ」で報じられていたからだ。次の読売記事をみてほしい。

「石破氏 焦がれる直接討論 党員票獲得狙う 首相訪露で機会減?」(8月22日)

《今回の総裁選期間中、首相は9月11~13日に訪露する予定で、その間は党主催の立会演説会などは中断される。石破氏の陣営には、「事実上の選挙期間の短縮だ」との不満がある。》

 そう、石破サイドからすると首相のロシア訪問は「論戦を避けるため」と見えたのだ。

「外交の安倍」は対ロシアという大義名分をもって日本を離れた。すると待っていたのは石破茂よりはるかに強敵のプーチン。しかもガチンコを仕掛ける気マンマン。なんという展開の恐ろしさ。

 ここで安倍首相も負けじとアドリブで切り返せばよかったが、沈黙したままだった。

官邸HPより

 産経の社説(9月14日)が何よりもリアルだ。

《プーチン氏は、安倍首相が東方経済フォーラムで北方領土における日露の共同経済活動の推進を語った直後に狙いすましたように提案をぶつけてきた。計算ずくで安倍首相に恥をかかせたも同然で「思いついた」はずがない。》

 とプーチンを叱るのだが、

《安倍首相は、プーチン氏の提案の直後に、「領土問題の解決なしに平和条約はない」と明確に反論すべきだった。》

 あの産経が安倍首相に小言を言わざるを得ない。産経師匠もプーチンの仕掛けに、怒りながら、心配しながら、「揺れて」いたのである。