「私、逮捕されるんですか?」――。ある税務調査で、広告代理店の女性社員が青ざめた顔で怯えていた。すべては取引先の中古車販売店社長から頼まれ、本来は来期の経費である請求書の日付を「今期」に改ざんしたことが発覚したためだった。
税務署に狙われた女性社員を待ち受ける運命とは? 現役税務署員である大蔵主税氏の新刊『税務署員うつうつ日記』(三五館シンシャ)より一部抜粋してお届けする。なお、登場人物・社名はすべて仮名である。(全3回の1回目/続きを読む)
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怪しい会社の怪しい経理
国道沿いに建つ事務所は、中古車販売店というよりは地方のディスコかパチンコ店のような趣きだった。全面ガラス張りで、夜になれば下品なほど眩いLEDが店内のクルマを照らし出す。店内は大理石調のタイルに真っ赤な革張りのソファ、そして壁一面に社長と有名人のツーショット写真が飾られていた。
私が調査に訪れたのは、中古車販売・修理を営む株式会社ロードスター。柴田社長の主導のもと、国産車から輸入車まで幅広いラインナップを取り扱い、カスタマイズから販売後の車検や修理まで一貫して引き受ける体制が強みらしい。
事務所の片隅で経費関係の請求書を確認していた私はある請求書に目を留めた。ラジオCMを放送した広告宣伝費のもので、CMは夏の甲子園の中継で流されていた。
問題は、その請求書の日付だ。ご存じのとおり、夏の甲子園の開催は8月。CM放送日も8月の日付だった。しかし、請求書の発行日は7月になっている。同社の決算期は7月。利益調整が疑われた。
株式会社ロードスターは今期の決算で大きな利益が出る見込みだったのだろう。そのままでは税金が高くなるため、本来は「来期の経費」であるはずの8月の広告費を無理やり「今期の請求書」として発行させ、利益を圧縮しようとした疑いがある。
「この請求書は8月の甲子園大会中のCMですが、どうして7月の請求日付になっているのでしょうか?」
私が指摘すると、柴田社長は憮然とした顔で言った。
