中古車販売店の不審な経費計上を追うなかで、取引先の広告代理店へ突如行われた反面調査。税務署員の訪問に激しく動揺し、「私、逮捕されるんですか?」と怯える女性社員から、社長の指示で「請求書の日付を改ざんした」という決定的な言質と署名を得ることに成功した。

 こうして手に入れた「動かぬ証拠」を携え、再びあの中古車販売店へと向かう。強気だった社長に事実を突きつけた瞬間、オフィスに沈黙が流れた。やがて観念した男が放った、開き直りと諦めが入り混じる一言とは? 知られざる税務調査の裏側を、大蔵主税氏の新刊『税務署員うつうつ日記』(三五館シンシャ)より一部抜粋してお届けする。なお、登場人物・社名はすべて仮名である。(全3回の2回目/最初から読む

写真はイメージ ©getty

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税務署員のお仕事

「これで終わりです。これだけなので、もう安心していただいて大丈夫ですよ」

「そうですか。よかったです。最初、頭が真っ白になって、自分が何かたいへんなことをしでかして、逮捕でもされるのかと怖かったんです」

 何もやましいことがなくても、人は「税務署」と聞いただけで身構えてしまうものだ。調査先の人たちにも、できるだけ穏やかに威圧感を与えないようにしなければいけないなと思い直す。

 それにしても取引先からの依頼なら、請求書の日付の変更くらい現場ではごく当たり前に処理されてしまうのだ。

「請求書の日付を変えてしまうと、相手先の経費の計上時期がズレて税務上の問題になるケースがあります。取引先からの依頼でも安易に応じると不適切な処理と見られてしまいますよ」

「すみませんでした」女性は深々と頭を下げた。とはいえ、貴重な確認書をもらい、頭を下げたいのはこちらのほうでもある。