恐喝未遂事件で異例の展開
2022年8月、下請けA社の役員らが錢高組の役員らから現金8000万円を脅しとろうとした恐喝未遂容疑で府警に逮捕された。この事件の背景には、A社が長年にわたり錢高組からのサバキ役を任されていたことがあった。この関係を公にされたくなければ、8000万円を支払えという恐喝未遂だったのだ。
当時、「サバキ」問題を一緒に追っていた同僚で、朝日新聞大阪社会部で大阪府警キャップを務めていた五十嵐聖士郎記者(現・広島総局次長)が、恐喝未遂事件の公判に提出された錢高組関係者らの供述調書を入手してきた。各調書には、錢高組が下請けのA社にサバキ役を任せていた実態が詳細に記されていた。
錢高組の現場所長やA社元役員の調書には、大阪府高槻市の大阪医科大附属病院(当時)の手術棟建設工事(2014〜2016年)をめぐるサバキの内容が書かれていた。調書や関係者の証言をもとに、その場面を再現してみる。
――工事が始まってすぐ、現場所長の携帯電話に1本の電話がかかってきた。
「地元のもんや、挨拶ないやないか!」「工事の地鎮祭つぶすぞ!」
男は脅し文句を並べたてた。現場所長はすぐに下請けのA社役員に電話し、対応を依頼。A社役員は神戸・三宮の喫茶店で電話の男と会うことになった。
その男は暴力団組織に関係する者と名乗り、「地鎮祭に半グレを10人行かせる。そこで病院理事長やゼネコン幹部をどつき回す」と脅し、現金を要求してきた。「止めなあかんな」と思ったA社役員は現場所長に相談。男の要求額よりは減らして、現金2000万円を支払うことで手を打つことになったという。
また、A社元役員に工事でサバキを頼んだ経験がある錢高組の別の現場所長は、調書でこう述べている。
「コンプライアンス全盛の昨今、表立って捌きをしたらマスコミに袋だたきにあい、会社がつぶれてしまいますが、いまだに利益要求をしてくる特殊近隣が来るので、人知れず捌きをしてくれるA社はありがたい存在でした」
※この続きでは、裏社会との癒着についてゼネコン役員が本音を語っています。約8700字の全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア『文藝春秋PLUS』と『文藝春秋』2026年8月号に掲載されています(市田隆「ゼネコンと反社の癒着は終わっていない」)。
■市田隆(いちだ・たかし) 1964年生まれ。1988年読売新聞社入社。2003年朝日新聞社入社。司法記者クラブキャップや、調査報道担当編集委員を歴任。共著に『原発利権を追う』など
