「皮剥きをしてくれないか」

 テーブルに置かれたジャガイモの山を前に、まさか料理担当にされないだろうなと不安がよぎる。料理は得意だったので皮剥きぐらいはお手のもの、と言いたいが、先程の作業で指先にまったく力が入らない。

 それでも約2時間、ジャガイモを剥き続けていると、司令官らしき身なりの整った人たちが、かわるがわる見に来た。

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〈ロシア人、ジャガイモ好きやなぁ〉

 そんな心境でひたすら剥き続けて、ようやくすべて終えた。

「今からこの銃で、あの的を撃ってみろ」

 夕方、疲れ切って部屋に戻ると、「今日は徹夜でドローンの警戒をする」との任務を告げられ、眠たい目を擦りながらドローンの監視活動に向かった。

 完徹した翌日も似たような任務が続いた。時には寝ている最中にいきなり起こされて、料理や掃除、力仕事といった雑用を命じられることもあった。そんな生活が3日間にわたって続いた。肉体的な疲労はピークに達し、睡眠不足で意識も朦朧となった。

 そして、4日目の朝を迎えた。

「サムライ、ついてこい」

 上官に連れていかれた場所は射撃訓練場だった。

「今からこの銃で、あの的を撃ってみろ」

 持たされた銃は、最新型のAK‐74。第二次世界大戦後に有名になった自動小銃だ。

写真はイメージ ©getty

 弾薬を詰めて目標物を見つめる。A4サイズの的まで約100m。抜き打ちのような射撃訓練だったが、動揺はまったくなかった。田村装備での訓練を通じて、肉体的な疲労があっても平常心を保つ方法は学んでいた。

 神経を研ぎ澄まし、スコープを覗く。放たれたすべての銃弾が的を撃ち抜いた。

 いま考えれば、これまでの雑用がすべてテストだったことがわかる。疲労がたまる作業を3日間にわたって続けさせた上での射撃訓練で、実力を測ったのだ。