税務調査の裏側にはこんな仕事もある。大蔵主税氏の新刊『税務署員うつうつ日記』(三五館シンシャ)に収録された一篇が、知られざる覆面調査の実態を生々しく伝えている。なお、登場人物の名前はすべて仮名である。

「すまんが、行ってくれ」

 舞台は、売上除外が疑われるピンサロ店『抜きっこ俱楽部』。統括官から覆面調査を打診された大蔵氏だったが、同じく声をかけられた先輩の岩園さんは「どうしても嫌だ」と断っていた。

「無理強いはできん。すまんが、大蔵、行ってくれんか」――統括官の低い声でのひと言が、異色の任務の幕を開けた。

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写真はイメージ ©getty

 風俗業は客が不特定多数で、領収証の発行もない。それゆえ単純に売上を除外するだけで脱税が成立してしまう。覆面調査の目的は、帳簿に表れない実態の把握だ。来店客数、料金表示と請求額の一致、追加料金の有無――確認すべき事項は多岐にわたる。

 夕方、ネクタイをあえて少しゆるめてから扉を押した大蔵氏に、高揚感はまったくなかった。「心の中は完全に業務モード」。受付で説明された料金を頭にたたき込み、スタッフの人数、客の回転率にも目を配る。

警戒されてはならない

「給料はいくらもらっているの?」「1日に何人相手にするの?」――聞きたいことは山ほどあった。しかし根掘り葉掘り聞いて警戒されてはならない。サービスを受け、1万円を支払い、領収証を求めることも思いとどまって店を出た。

 翌日、統括官への復命も淡々と進む。「料金は事前説明どおりで追加などはありませんでした」「従業員は3名、客の回転はかなり速そうです」。ひと通りの報告を終えたとき、統括官がぽつりと問いかけた。「女の子のテクニックは?」。大蔵氏は真面目に「……まずまずかと」と答え、思わず赤面した。

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 風俗店でサービスを受けた税務署員はその後どうなったのか。本編は【下記リンク】覆面調査のために訪れたのは風俗店『抜きっこ俱楽部』…サービスを受けた税務署員が「もう二度と行きたくない」と語るワケ へ続く。

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