その解消のために、フジHDのドンに上り詰めていた日枝久会長(当時)はニッポン放送株を株式公開買い付け(TOB)で取得し、資本構造を正そうとした。そのTOBの最中に浮上したのがライブドアの堀江貴⽂社⻑(当時)による奇襲だった。背後には堀江氏の指南役としての世彰氏がいた。
だが、堀江氏は、「フジとシナジーを求めて業務提携したい」と持ち掛ける一方で、「株式交換した株をひそかに買い戻して⾃分たちの影響下にある投資事業組合(ファンド)に持たせ、時機をみて市場で売却し、売却益を還流させていた」(同前)とされる。実態はグリーンメーラーに近かった。
そして2カ⽉後の2005年4⽉18⽇、ライブドアは買い占めたニッポン放送株をすべてフジに買い戻させただけでなく、フジHDからライブドアへの出資⾦440億円も掌中に収めた。フジHDがライブドアに⽀払った⾦額は総額で1400億円余に及んだ。
しかし、翌06年1月、事態は一変する。東京地検特捜部は、別の企業買収に絡む証券取引法違反(偽計・風説の流布など)容疑で、六本木ヒルズのライブドア本社に強制捜査に⼊り、堀江氏らライブドア幹部4⼈を逮捕した。捜査は堀江氏の指南役だった世彰氏にも向かい、同年6月、ニッポン放送株を巡るインサイダー取引の容疑で逮捕されるに至ったのだ。当時高校生だった絢氏は、父の裁判をすべて傍聴したという。
絢氏による20年目の「仇討ち」
こうした経緯もあり、絢氏によるフジHD株の大量保有は、20年目の「仇討ち」と称された。結果、フジHD側は彼らを「返り討ち」にはできず、事実上の「敗北」で終わった。
フジHDは今年(2026年)2月、サンケイビルをはじめとする都市開発・観光事業のグループ11社について「外部資本の導入を検討する」と発表した。村上世彰、野村絢親子が保有するフジHD株の売却(フジが自社株買いで買い戻す)条件とした不動産事業の分離・売却を清水社長は飲んだのだ。ほぼ「白旗を上げたのに等しい」(前出・市場関係者)と言っていい。
フジHDの不動産子会社売却を巡っては、5月18日に行われた1次入札で、米KKR、ブラックストーンといった投資ファンドやゴールドマン・サックス・グループ、総合商社など15社以上が応札し、複数の買い手候補が1兆円超を提示したとされる。サンケイビルは売却に向け、交渉代理や助言役を務めるアドバイザーに大和証券とみずほ証券を起用している。年内にも売却先を決めるという。

