野村絢。株式を上場する企業経営者で、この名前を知らない者はいないだろう。
才色兼備を絵に描いたような存在でありながら、企業経営者を震え上がらせるアクティビスト(物言う株主)という強面の顔も持つ。著名投資家・村上世彰氏の長女にして、その事実上の後継者といえる人物だ。
巨大統合劇の引き金を引いた「モノ言う株主」
6月5日、ヤマダホールディングス(HD)とエディオンが経営統合で基本合意した。売上高2兆5000億円、店舗数も1万店のガリバー家電量販店の誕生だ。この巨大統合劇の引き金の一つとなったのは絢氏によるヤマダHD株の大量保有(2.16%)だった。
「ヤマダHDの創業者会長の山田昇氏は絢氏や世彰氏と今年2月以降、面談を重ね、1倍割れしたままのPBR(株価純資産倍率)の改善など株価対策について協議していた」(関係者)とされる。エディオンとの統合は、その答えでもあった。「企業再編の裏に野村絢の影あり」(市場関係者)というわけだ。
絢氏のベールは徐々に取り払われようとしているが、いまだ謎めいた部分も残されている。
スイスの寄宿学校→慶應→モルガン・スタンレーへ
絢氏は1988年生まれ、現在38歳。スイスのボーディングスクール(寄宿学校)を経て慶應義塾大学法学部政治学科を卒業後、モルガン・スタンレーMUFG証券に入社する。2015年6月にC&I ホールディングスのCEO(最高経営責任者)に就任し、頭角を現した。
C&Iは、経営破綻した旧ベンチャー・リンクを世彰氏らが引き継ぎ、村上家の資産を運用するプライベートファンドに業態転換した、いわゆる「(運用の)箱」である。
村上家は「レノ」「シティインデックス」「南青山不動産」「エスグラントコーポレーション」といった日本法人を持ち、そこを通じて日本株に投資している。これらの法人は、多額の繰越欠損金を抱えたり、経営破綻したりした会社を買い取り、運用の箱として活用したもので、「繰越欠損金など負債と課税所得を相殺することで税負担を軽減してきた」(市場関係者)とされる。

