その後、ドラレコのレンズはヒビだらけのフロントガラスやエアバッグの素材とみられるもので覆われた。映像は二秒間で途絶えた。この爆音は約一四〇メートル離れたホンダ車の販売店のスタッフの鼓膜にも届くほどだった。飯塚は衝突を避けるためにハンドルを右に切ったというが、それが事実かどうかはわからない。

 このエリアを「第二現場」という。真菜さんは「ドン」という音とともに撥ねられ、空中に投げ出され、前方の信号機の高さまで飛ばされた。第一被害者の石川の自転車とは接触部分が異なった。石川は主に後輪で、サドル部分と後輪を繫ぐフレームが折れるに留まったが、真菜さんは前後輪でもろに衝撃を受けた。また、サドルの位置が石川は高かったが、低かった真菜さんはダメージを直接的に受けることになった。

「通行人がパニックになって…」

 近くの店舗で仕事をしていた宇野良介(仮名)が証言に応じた。宇野は何かが爆発したような音を聞いてすぐ外に出た。道路には大勢の怪我人が倒れていた。「現実を理解できず状況がのみこめませんでした。通行人がパニックになっていて地獄絵図のようでした」

ADVERTISEMENT

 宇野の一番近くにいた被害者が真菜さんだった。真菜さんは道路の左側の路肩にうつ伏せで倒れていた。衝突場所から飯塚の車の進行方向と同じ護国寺方面に向け、交差点を越えて飛ばされたのだ。その距離は約五〇メートルに及んでいた。大量に出血し、顔は血まみれで、白いブラウスも真っ赤に染まっていた。周辺にも血だまりが出来ていた。真菜さんは靴下しか履いていなかった。

 真菜さんの赤い靴の右足は真菜さんから約一〇メートル離れた日出町第二公園の敷地に落ちていた。左足は二〇メートルあまり離れた同じ公園の敷地内で見つかった。

 リュックは道路のセンターラインあたりに落ちていた。空中に投げ出された際に、靴もリュックも体から離れたことによるもので事故の衝撃を物語っていた。

 しばらくして到着した救急隊が必死で心臓マッサージを行っていた。