お茶たてポーズはどこかへ行ったけど、でも
北山亘基と伊藤大海(と筆者)が、マイアミからファイターズに帰ってきた。翔平は帰ってこなかったけど、北山に考えさせた例の「お茶たてポーズ」はエスコン上陸。郡司裕也はそれを風化させたくないようで、オープン戦期間中何度か塁上でそれをやっていたが、シーズンに入ってからは見なくなってしまった。結局、エスコン開幕セレモニーで大型ビジョンに抜かれた北山が「セルフ・お茶たてポーズ」を披露したことで丸くおさまった感がある。
お茶たてポーズは風化した(?)が、あの日マイアミで感じた大海への感情はいつまでたっても風化しない。あと鮭明太も。
大海はシーズンに入ると本来の姿を取り戻していく。開幕戦こそ勝ち星がつかなかったものの、翌登板で6回無失点の初勝利。あれよあれよと調子を取り戻し、5月は4勝負けなし、防御率は1.24で自身3度目の月間MVPまで受賞。
その月間MVPを当確させた5月26日の甲子園・阪神戦。先発の大海は8回まで無失点の好投で今シーズン初めて9回のマウンドへ。3連打で無死満塁の大ピンチを招くも、そこからなんとか踏ん張って終わってみれば13奪三振で今季初完封。「伊藤大海復活」を印象付けるハイライトになった。
今年の交流戦初戦でもあったので、セ界のみなさまが大海を見るのはまさしくあの準々決勝以来だったのだろう。DAZNで実況していた在阪局のアナウンサーは「アブレイユに打たれた3ランが日本の野球ファンにこびりついてしまったけど……」と話していた。そう、日本の野球ファンはみんな、あの一本を忘れられていない。
そして、あの一本を大海のユニフォームを着てレフトスタンドから見ていたファイターズファンは、こびりつくどころの話では済まないのだ。
忘れたくても、忘れられない
大海は帰国してすぐ、あの準々決勝について「記憶がないですね」とコメントしている。
これはファンの勝手な思い。俺たちの勝手なエゴ。大海があの試合のことを覚えていないのなら、俺たちがいつまでも覚えている。覚えていようというか、忘れたくても忘れらんないんだよ。スーパーの「ご飯のお供」的なコーナーにある鮭明太のビンを見るたび、被弾の瞬間の絶望感も、励まし合ったハムファンも、二口食べた先輩への怒りも、全部一緒に蘇る。
マイアミの街並みもローンデポの喧騒も不気味な球場までの道のりも、帰国してみたらあれは夢の中だったとしか思えないのだけど、あの時感じた大海への感情だけは鮮明だ。
大海があの試合を覚えていなくても、この先も続いていく伊藤大海の物語の中に欠かすことは絶対にできない場面。あの場面を忘れないことが、あの球場に居合わせたファイターズファンとしての使命だとすら思う。
思えば、鮭明太ってすごくパ・リーグっぽくないですか。鮭はファイターズ。明太はもちろんホークス。「鮭明太」と呼ばれるわけだから「早慶戦」「慶早戦」論争と同じだ。このままの順位だと「明太鮭」になってしまう。「鮭・獅子・明太」でもいいから、鮭は明太の上にいなければならない。ファイターズと鮭と大海にとって実りの秋にならんことを。
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