日本外交に強い追い風が吹き始めている――そう言ったところでピンとくる日本人がどれほどいるだろうか。
キーワードは「米中貿易戦争」と「ZTE(中興通訊)」の2つだ。
米中貿易戦争によって日本に追い風が吹くと言えば、たいていの日本人は、アメリカによる制裁で中国経済が停滞し、ゼロサム的発想で日本に利益がもたらされると受け取るかもしれない。
だが、それほど単純な話ではない。
貿易赤字問題でトランプ政権がターゲットにしているのは中国だけではない。今月6日には米紙「ウォールストリート・ジャーナル」が、トランプ大統領が対日貿易赤字問題で「(安倍首相との)友好関係も終わる」と発言したと報じている。
だが、日米の貿易摩擦と米中の貿易戦争の間には、明確に区別されなければならない違いがある。それは前者が単純に輸入枠の拡大などが問われているのに対し、後者は技術革新によってもたらされる次の巨大な市場の覇権をめぐる戦いであるという点だ。
2つ目のキーワードである「ZTE」への米国製部品の輸出禁止、巨額の罰金といった制裁発動はまさに、その第1ラウンドと位置付けられる。
アメリカの発動する(もしくは準備する)制裁は実は千差万別で、大きく分けても対メキシコ・カナダ、対ロシア、対イラン、対トルコ、そして対日本、対中国とでは、それぞれ理由も安全保障から経済まで幅広く、目的も同じではない。
今回、私は『文藝春秋』10月号でトランプ政権による対中制裁の本当の意味について詳しく書いた。