『人に話したくなる数字と科学の話』

 ヒトの遺伝子数は2万2000、宇宙の年齢は138億。はたまた“3秒ルール”は本当か? 世界を数字と科学で読み解こう――。サイエンスライター・佐藤健太郎さんの新刊『人に話したくなる数字と科学の話』(文春新書、8月20日発売)には、ちょっとした話題にぴったりの79のトリビアが収録されている。

 今回はその中から、「21」についての一話をお届けしよう。

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千葉県のヨウ素生産量の世界シェア【21%】

 この世の全ては、元素の組み合わせで成り立っている。現在知られている元素は118種だが、うち30種ほどは寿命が短すぎ、身近には存在しない。残りの八十数種の元素も、水素や炭素、鉄のようになじみ深いものから、セリウムやバナジウムのようにほとんど耳にする機会のないものまで様々だ。

 だがマイナーな元素たちにも、様々な用途が開発されている。強力な磁石に不可欠なネオジムやジスプロシウムなど、いわゆるレアメタルがその例だ。これらは埋蔵量が少ない上、特定地域に偏在していることが多い。前項でも触れた通り、特に産業上重要なレアメタルは中国に産するものが多く、このためことあるごとに外交上の切り札として持ち出される。今後もレアメタルがハイテク産業の鍵であり続けることは間違いなく、対策は必須だ。

 各種の稀少元素は、残念ながら国内では産出しないものがほとんどだ。しかしたった一つだけ、日本が世界トップレベルの生産量を誇るものがある。ヨウ素という元素は、世界の生産高のうち、3割を日本が占めるのだ。中でも千葉県の九十九里浜は一大産地で、全世界のヨウ素生産の21パーセントがここに集中している。海藻に多く含まれるヨウ素が、長年かけてこの地に蓄積した結果だ。ただし、せっかくの国産資源であるヨウ素には、これまでうがい薬やレントゲン写真の造影剤など、限られた用途しかなかった。

 しかし最近になり、ヨウ素に重要な使い道が切り拓かれようとしている。ペロブスカイト太陽電池がそれだ。現在主流のシリコン系太陽電池が重くかさばり、製造に電気を食うのに比べ、ペロブスカイト太陽電池は簡単に曲げられるほど薄く軽量で、製造も簡便だ。発電効率が課題であったが、近年ではシリコン系に肩を並べるまで上昇した。このため世界で注目を集め、大規模な実用化に向けて研究競争が繰り広げられている。

 ヨウ素は、このペロブスカイト太陽電池の鍵を握る物質であるため、現在千葉県では増産体制が整えられつつある。レアメタルのような供給不安の心配が今後もなさそうなことは、大変心強い。日本発で、日本の資源で作られるペロブスカイト太陽電池が、エネルギー問題のキープレイヤーになる日は近そうだ。

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