中国が圧倒的な世界シェアを誇るレアアース。国際緊張が高まる中、日本が進めているのが南鳥島沖でのレアアース泥採鉱だ。この一大事業の責任者をつとめる内閣府SIP海洋プログラムディレクターの石井正一氏が、今後の課題を解説する。
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産業的開発までの4つの課題
採鉱においては、環境への配慮も重要な課題です。例えば2022年、カナダのザ・メタルズ・カンパニー社がハワイ沖でマンガン団塊を海底から採取した際は、重金属が含まれる海水をそのまま周囲に廃棄したために、環境保護団体からの批判を招きました。真っ暗な深海は、いわば“誰の目も届かない世界”。国際的な信頼を得なければ、海洋資源の開発は進められません。
そこで我々は、海洋環境に影響の少ない海洋石油・天然ガスの開発手法である「閉鎖型泥水循環」方式を採用しました。パイプの先端に付けて海底に下ろした採鉱機は、先端部分のプロペラで泥を細かくし、内側のパイプから海水を注入して、海底の資源が混ざった泥水の状態にし、それを外側のパイプから船上に揚泥するのです。
この装置を使えば、周りの海底環境に影響を与えずに採鉱できます。今回の泥水はすべて地球深部探査船「ちきゅう」に載せて本土に持ち帰るようにし、海中への放出を最小限に抑制します。また、採鉱機の稼働にあわせ、環境モニタリングを実施しています。
今後の「産業的規模の開発」までには四つの課題があります。
第一の課題は「資源量」の確認、第二の課題は「採鉱技術」の確立、第三の課題は「製錬・精製技術」の確立、そして第四の課題は「輸送コスト」です。
現時点で第一と第二の課題はほぼクリアできましたが、「製錬・精製技術」はまだこれからです。
「研究開発」ではなく「産業化開発」には、それなりの規模で「製錬」と「精製」の工程を実用化する必要がありますが、まずは「レアアース泥」の実物を大量に採鉱・輸送できなければ、「製錬」と「精製」の技術は開発できません。とくにレアアース泥は、陸上のレアアース鉱石と違って、魚の骨のアパタイト(燐灰石)にレアアースが凝集してできたものなので、カルシウム分を除去する工程が必要になります。

