「生野菜に飢えています」
最後の課題が「輸送コスト」です。今回は「泥水」のまま本土に持ち帰りましたが、来年2月に予定している採鉱試験では、これから建設する南鳥島の施設で泥水を脱水し、環境基準を満たした処理水は海域に放出すべく関係機関と協議を行っています。こうすれば、容量が5分の1程度になり、運搬コストが安くなるからです。
今回の試験では、採鉱作業は4日程度でしたが、次回は現場海域に37日程度滞在します。次回の採鉱試験が約1年後と聞いて、「なぜすぐに実施しないのか?」と疑問をもたれるかもしれませんが、肝心の「脱水処理施設」も建設に向けての申請手続きや工事発注手続きを行うのはこれからです。
しかし、泥水を「脱水」したくらいではコスト削減は不十分です。南鳥島は本土から約1900キロも離れているからです。自衛隊、国土交通省、気象庁の職員のみが常駐する“絶海の孤島”で、日常生活のインフラはほぼ皆無です。今回の試験航海では、補給がないなかで生鮮食料品の確保に苦労したようで、乗船した人からは「石井さん、みんな2週間も生野菜に飢えています」などと言われてしまいました。今後の教訓にしたいと思いますが、こうしたことも試験を繰り返すなかで見えてきます。
現時点で、人員が常駐できる宿舎を南鳥島に建設するのは、建築資材の運搬自体が困難なので、とりあえず、沖合に停泊する船舶を宿舎にして、そこからヘリコプターで「ちきゅう」に人員を運ぶことも考えています。ただし、何より悩ましいのが、南鳥島まで飛行機を飛ばしてくれる民間会社を確保することです。“絶海の孤島”でのプロジェクトは、本土とは勝手が違って、ロジスティクスやインフラの整備が必要となり、そこに大きなコストが生じるのです。
※この続きでは、南鳥島沖でのレアアース採鉱の意義を解説しています。
※約7000字の全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2026年4月号に掲載されています(石井正一「レアアース・海洋探査 南鳥島で商業化の課題が見えた」)。
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