高橋は共同通信出身の皇室ジャーナリストで、前記の有識者会議でも発言し、2011(平成23)年に亡くなっている。元文藝春秋の編集者で近現代史研究者の浅見雅男と3人で勉強会を重ねた畏友であった。先駆的に女性天皇・女系天皇を主張したその問題意識は、現在にもダイレクトに響いてくる。
日本を「強い国」に改変
現下の皇位継承問題、とりわけ今回の改正案とその進め方、語られ方には、さらに重大な問題があるように思う。天皇をはじめとする皇族の暮らしを左右する法改正であるのに、彼ら自身の意見にまともに耳を傾けることなく法案化が進められていることだ。これは当事者の人権をそこねることになるのではないか。生身の存在である皇族への敬意が感じられないのだ。今般の皇室典範改正は、天皇と象徴天皇制への歴史的な理解に裏打ちされているようには思えず、一時的に多数を誇る政治権力が象徴天皇制を改変しようとする横暴であるようにすら見えてくる。
あえて言えば、反天皇的で、反国民的で、反憲法的、そして非人間的な政策が実現されようとしている。それは、いま同時に進められている、憲法改正、国家情報会議創設、スパイ防止法制定、国旗損壊罪新設といった、国家主義的右派としての高市政権による政策、さらにそれによって日本を「強い国」に改変しようとする動向のなかの一要素なのであろう。
※この続きでは、保阪正康氏が「非戦の知恵」について語っています。約9000字の全文は、月刊文藝春秋の電子版『文藝春秋PLUS』に掲載されています(保阪正康「皇室典範改正は象徴天皇制を揺るがす」)。
