『ゾンビ回収婦』で第175回芥川賞を受賞した小砂川チトさん。本格的な小説執筆を始めたのは、大学院を卒業した25歳の時だったという小砂川さんに、執筆の原点について聞いた。

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 「純文学」と「エンタメ」の間で

 ――群像新人文学賞を受賞したデビュー作の「家庭用安心坑夫」、2作目の「猿の戴冠式」が続けて芥川賞の候補となり、そして3作目でついに受賞となりました。

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 小砂川 実は、初めて候補にしていただいたときから、自分の作品は芥川賞には場違いではないかと、ずっと思っていたんです。もちろんノミネートはとてもありがたいことですけれども、2回目も、3回目の今回も「本当に?」という気持ちでした。

新芥川賞作家の小砂川チトさん ©文藝春秋

 ――場違いというのは……。

 小砂川 今回はとりわけなんですが、そもそも自分の書いているものが純文学なのかどうかも自信が持てなくて。編集の方にも「これは純文学でしょうか」とお訊ねしたんです。

 ――編集者の方は何と?

 小砂川 「はい、純文学だと思いますよ」と。編集さんがそう言ってくれるならと、それでようやく落ち着きました(笑)。

 ――小説を書き始めたときから、純文学志向だったんでしょうか。

 小砂川 そういうわけでもないんです。最初に投稿したのはエンターテインメント系の賞でした。

 ――そもそも小砂川さんが書き始めるきっかけは?

 小砂川 うーん、実はこれが、いつもあまり上手に答えられないご質問なんです……。25歳の頃、大学院の修士課程を出るか出ないかという時期に、博士課程に進むのも、今から就職するのも「ちょっと違うな」と思ったんです。