「あの甲子園の土を踏みたい」。その夢だけを支えに3年間練習を続けてきた高校生もいる。暑いからドームへ移そうというのは、現場の思いを置き去りにした「愛のない正論」ではないか。そう考えていた。
最高気温40℃以上の日を新たに「酷暑日」と…
だが、この10年で状況は変わった。
当時も十分に暑かった。しかし、年を追うごとに暑さは深刻さを増し、いまや社会全体の問題になっている。気象庁は今年から、最高気温40℃以上の日を新たに「酷暑日」と定めた。40℃という気温が、もはや現実のものとして想定しなければならない時代になったのである。
「甲子園だから我慢する」のではなく「酷暑だから考え直す」。そういう段階に来ているのかもしれない。朝夕開催やクーリングタイムなど、できる対策は続ければいい。ただ、その前に「開催場所も含めて考えられないか」という議論を、もっと正面からしてもよいのではないか。開催場所は変えずに、まず野球そのもののルールを変えようとする。どこか順番が逆のように思えるのである。
田中将大といえば、2006年夏の甲子園決勝での引き分け再試合で、2日間20イニング249球を投げた。近年は球数制限やタイブレークなど、選手を守るためのルールが少しずつ導入されてきた。
高校野球の「投げすぎ」は、昔から議論になってきた。先日、「伝説の投手」の訃報が届いた。板東英二さんである。
板東さんは高校3年生の春の四国大会で、2試合で計41イニングを投げた。この「投げすぎ」を重く見た日本高野連は、延長戦を18回で打ち切り、後日再試合とするルールを導入した。そして、その夏の甲子園で新ルールの適用第1号となったのが、皮肉にも板東さん自身だったのである。※このあたりは『高野連』(広尾晃・新潮新書)に詳しい。