「ニューヨークの不動産屋」VS.「ペルシャ絨毯の商人」

 笠井 まず、一つ目の「兵站の失敗」について語るうえで重要なのは、イラン攻撃も、インパール作戦も、短期決着を前提としていた点です。それが兵站の軽視に繋がっています。

日印関係史のエキスパートである笠井亮平氏 ©文藝春秋

 齊藤 トランプ大統領が短期決戦を念頭に置いていたのは間違いありません。アリー・ハメネイ師以下、要人を次々と殺害する「斬首作戦」により、イスラム革命体制を一気に転換させる狙いでした。

 今回に限らず、トランプ大統領は何事も即断即決で進めようとします。これをハイリスク・ハイリターンの「ニューヨークの不動産屋」型とすると、イランの指導部は「ペルシャ絨毯の商人」型です。イランでは、1枚の絨毯を買うまでに数カ月もかけて値段交渉をするように、じっくりとした駆け引きをまったく厭わない。そもそもの時間の感覚がまったく異なるのです。

ADVERTISEMENT

なぜ米国はイランに負けたのか

 笠井 1944年の3月上旬に進攻を開始したインパール作戦は、当初、およそ1カ月半後の4月29日、つまり当時の天長節(昭和天皇の誕生日)までに完遂することを目標にしていました。5月の雨季が到来すれば行軍が著しく滞るという事情もあり、短期決着は勝利への絶対条件だったといっていいでしょう。ただ戦場となったインドとミャンマーの国境あたりを上空から見ると、険しい山と深い谷がいくつも入り組んだ過酷な環境です。飛行機なら一瞬ですが、徒歩で兵器や物資を運びながらこの国境を越えて戦う上で長期化をまったく想定しなかったのは、あまりに杜撰だったと言わざるを得ません。

完全版 インパールの戦い

※本記事の全文(約7000字)は、月刊「文藝春秋」9月号と、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(齊藤貢×笠井亮平「イラン戦争は現代のインパール作戦だ」)。

文藝春秋

この記事の全文は「文藝春秋PLUS」で購読できます
イラン戦争は現代のインパール作戦だ

出典元

文藝春秋

【文藝春秋 目次】芥川賞発表 受賞作全文掲載 小砂川チト「ゾンビ回収婦」/「高市総理よ、日本を壊すな」細川護熙/がん15部位 早期発見ガイド

2026年9月号

2026年8月10日 発売

1480円(税込)

Amazonで購入する 目次を見る
次のページ 写真ページはこちら