多くの男性は、自分が性的なまなざしの対象になりうる可能性を、想像すらしていません。「自分だけは安全な場所にいる」「自分だけは絶対に被害に遭わない」という、男性側の無自覚な思い込みや万能感こそが、被害の深刻さを見えづらくしているといわざるをえません。

「加害者家族」は隠れた被害者

盗撮事件のニュースが流れるたび、私の頭をよぎるのは、「加害者家族」の存在です。クリニックでは、2007年7月年から「加害者家族支援グループ(Sexual addiction Family Grou-meeting:通称SFG)」を主宰し、性犯罪者の家族を支援し続けています。

そのため私は、「この加害者の家族は、今頃、どこでどのような思いをして過ごしているのだろう」と、ニュースの向こう側につい思いを馳はせてしまうのです。英語には「隠れた被害者(hidden victims)」という言葉があります。犯罪に手を染めた人の親やパートナー、そして子どもたち。

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つまり、加害者家族です。彼らは、なんら罪を犯していないにもかかわらず、「家族である」という一点のみで、世間から強い嫌悪感や非難のまなざしを向けられます。メディアが押しかけ、プライベートを暴かれる。学校で子どもがいじめに遭う。就職や進学に影響が出る。

一家の働き手を失い、経済的困窮に陥る。世間からの目が気になり、外出が困難になり、うつ状態に陥る――。このような経済的、心理的、社会的な苦境に直面する加害者家族は、まさに隠れた被害者なのです。

幼稚園に通えなくなった「盗撮犯」の子

名古屋で起きた教員グループによる盗撮事件でも、その構図は顕著でした。主犯格の教員には妻子がいましたが、メディアの取材は、彼の自宅や、そのすぐ近くにある妻の実家にまで及びました。

インターネット上には、モザイク処理を施しているとはいえ、自宅の外観や妻の経歴まで掲載するメディアも散見されました。

こうした報道のあり方は、加害者家族の生活を著しく脅かします。本書の第2章で取り上げた、スマホを筆箱に隠し入れて校内盗撮をした教員・田中一朗氏(仮名)のケースも同様です。事件が報道されると、妻と子どもは周囲の視線をおそれて、自宅から出られない状態になりました。