クマさんと呼ばれる名物おじいちゃん

井上 だからデビューして以来、帝劇にはずっと住んでいるような、民宿みたいな感じなんです(笑)。

阿川 民宿って(笑)。

井上 客席が2000席ある大きい規模の劇場なんですけど、舞台裏は親戚が集まったみたいな空間で。僕がデビューした当時、楽屋は畳敷きの和室だったんですよ。

ADVERTISEMENT

阿川 歌舞伎公演の名残ですね。

井上 幕内係(舞台にまつわる所用を担当)がいたり、楽屋付きの係の方が楽屋の掃除をしてくれたり、ポットにお湯を入れてくれたり。人があったかいんですよ。

阿川 楽屋は劇場のどのあたりにあったんですか?

井上 5階から8階です。

阿川 へえー!

井上 1階が舞台面なんですけど、出番になると、エレベーターで降りていくんです。

阿川 エレベーターが来なかったりしたら焦るね。

井上 そのためにエレベーター係の方がいらっしゃって、「開演〇分後に芳雄を呼んで(1階の舞台に)降ろして。次は〇〇を呼んで」みたいな工程が完璧に頭に入っているんです。

阿川 エレベーター係はお一人?

井上 何人かで手分けして、主役専属の係の方がいた時もありました。エレベーター係にクマさんっていう名物おじいちゃんがいて、見た目は90歳くらい。定年があるから60歳にもなっていなかったのかな。そのクマさんが「芳雄、良かったじゃん」っていつも感想を言ってくれるんです。逆に「今回はダメだな」とはっきり言われることもありました。

阿川 ええっ(笑)。

井上 たまに稽古場の隅にいて、クマさんが稽古場に現れた作品はヒットするという伝説があったんです。

《この続きでは、韓国レッスンの秘話や蜷川幸雄演出の舞台「ハムレット」に出演した際の苦闘、昨年声が出なくなった際に大竹しのぶにかけられた言葉など、「週刊文春 電子版」で対談の全文を読むことができる》

この記事の詳細は「週刊文春電子版」でお読みいただけます
阿川佐和子のこの人に会いたい ゲスト・井上芳雄(ミュージカル俳優)

阿川佐和子のこの人に会いたい ゲスト・井上芳雄(ミュージカル俳優)

次のページ 写真ページはこちら