昭和29年、茨城県の田舎村で起きた一家ら9人の大量毒殺放火事件。遺品に残された文字から捜査線に浮上したのは、前科8犯の男・緑志保だった。

 前編では、保健所員を装った「白衣の男」の暗躍と容疑者特定までを追った。全国指名手配の末、ついに逮捕された緑。

 しかし護送中、「車に酔うから」と求めた仁丹ケースによって、事件は衝撃の結末を迎える――。

ADVERTISEMENT

 鉄人社の文庫新刊『戦後まもない日本で起きた30の怖い事件』より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目)

写真はイメージ ©getty

◆◆◆

一家9人を殺害した凶悪犯

 警察は名前の「志保」を「しほ」と読み「I・M」とは合致しないものとみていたが、そのうち「志保」が「いつほ」とも読む場合もあることがわかり、さらに「フ ミドリ」の解明に当たっていた捜査員が宇都宮市内のクリーニング店から、緑らしき男に「フ(リーの客の)ミドリ」と記したワイシャツを手渡したとの証言を得る。

 事件発生から24日目の11月6日、警察は緑を全国に指名手配。すぐに栃木県塩谷郡塩原町(現・那須塩原市)の旅館で隣室の客から現金500円(現在の貨幣価値で約1万8千円)を盗み山中に逃げたとの情報が入り、付近を捜索した結果、翌7日未明に逮捕された。