“透明な娘”を相手にどう演じるか
──学の心配の根底には、娘のことを理解できない不安や、年頃の娘がいつか自分のもとを巣立ってしまう寂しさなども含まれているのでしょうか。
毎熊 そうだと思います。親しい相手であっても、その人の気持ちを完全に理解することはできませんよね。たとえば、「今日、あの人は自分のことをどう思ったんだろう」と考えることがある。でも、本人に聞いたとしても、本当の気持ちまでわかるとは限りません。ましてや家族のように近い相手であれば、わからないことへの不安は、より大きくなると思います。
また、時間が経つだけで、以前と同じ関係ではいられなくなることもあります。自分自身も年を重ねて、人生にも、人と一緒にいられる時間にも限りがあるのだと感じるようになりました。
子どもたちと過ごす時間も、ずっと続くわけではありません。数年後には親元を離れ、自立していく。もちろん、それは喜ばしいことですが、父親としては寂しさもあるでしょう。学が娘たちに向ける不安や寂しさには、自分の中にある本当の感情を重ねることができました。
──姿の見えない末娘・ひかりを相手に演じる難しさはありましたか?
毎熊 形のない、目に見えないものを観客にどう届けるか、というのは、大きな課題でした。ひかりは画面には映りませんが、リハーサルではひかり役の鈴木凜子ちゃんに来てもらい、実際に僕たちと会話をしながら役をつくっていきました。
本番は本人がいない“空白”の状態で撮影しましたが、「ひかりはこういう子だ」という実感をもって、芝居をすることができました。姿は見えなくても、映画を観る方には、ひかりの性格や存在感が伝わるのではないかと思います。
