智弁和歌山戦で明らかに織田の出力は落ちていた。8月18日の準々決勝・花巻東戦で123球を投げ、7安打10奪三振完封。すでに一度フル出力で勝ちきった後、中一日の登板。智弁和歌山打線が素晴らしかったのは当然として、織田本人の球威、制球、打者への圧の持続力は、準々決勝のそれとは明らかに違っていた。

 ここでまず整理しておきたいのは、渡辺氏の評価が間違っていたわけではない、という点だ。織田の瞬間最大風速は、松坂大輔と比較されても不思議ではない。ストレートの速度、変化球の種類、投球フォームの完成度、プロ側から見た伸びしろ。これらを総合すれば、「現時点では松坂以上」という評価は、素材論、能力値論として十分に成立する。

 ただし、松坂大輔をはじめ、田中将大、藤浪晋太郎など、一時代を築いた高校生エースとは明確に異なる要素があった。彼らが備えていた異常なまでの“馬力”だ。

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異常な高校生エースたちの存在

 松坂は1998年夏、PL学園戦で延長17回250球を投げ抜いた翌日に救援登板し、決勝ではノーヒットノーランを達成した。

 田中将大は2006年夏、体調不良を抱えながらチームを決勝再試合まで導き、早稲田実業との死闘を演じた。

 藤浪晋太郎は2012年、春夏連覇の決勝で14奪三振完封と、すでにプロ級のタフネスを見せつけた。

 彼らはただの「いい投手」ではなかった。甲子園の過密日程、炎天下、連戦、相手の研究、疲労、プレッシャー。そのすべてを背負ったうえで、なお球威を落とし切らない「いい投手」だった。

 この異常な馬力を持つエースが、現代では生まれにくくなっている。