――脚本を書くにあたって、どんなリサーチをしましたか?
ホー 脚本を書いたのはコロナ禍でした。世界の未来が暗くなっていく中、もし映画を監督するチャンスがあるなら、少なくとも映画館にいる2時間は、人間の温かみを感じて楽しい思いをしてほしかったんです。
そして、もし「善良な嘘つき」がいたらどうなるだろうと考えました。リサーチ中、実際にある裕福な女性から多額のお金を騙し取った男性に出会いました。彼は良心の呵責を感じて真相を女性に告白したのですが、彼女は「私と別れたいから、そんな嘘をついているんでしょう」と、逆に真相を信じなかったそうです。
映画は主観的な世界を描くものだと思います。被害者を道徳的に批判するだけなら、ニュースを作るのと変わらない。だから私は、「なぜ騙されたのか」ではなく、「なぜ彼女はその時間、あれほど幸せだったのか」を見たかったんです。
木村拓哉の『ロングバケーション』さえ観てくれればいい
――サンドラ・ンをキャスティングした理由は?
ホー サンドラは最初から当て書きではありません。でも書き始めてすぐ彼女が浮かび、書けば書くほど、この役に合うのは彼女しかいないと思うようになりました。
実際の彼女は母親で、幸せな家庭を築いている。でも、なぜか私には「母親の匂い」をまったく感じないんです。強い女性に見えるけれど、その内側には柔らかさや孤独もある。中年の女優だから母親役ばかりでは面白くない。おしゃれをして、バリバリ恋愛する女性を演じる姿を見せたかったんです。
――MCチョン・ティンフーを起用した理由はなんですか?
ホー MCの役は木村拓哉をイメージして書きました。彼が決まったとき、「特に準備する必要はない。『ロングバケーション』さえ観てくれればいい」と言いました(笑)。
MCを推薦したのはサンドラです。当時はまだ俳優としてのデビュー作も公開されていなかったので、彼のコンサートを観に行きました。自分の経験を理路整然と語る姿を見て、彼にお願いしようと決めました。何より声がとてもよかった。この映画では、電話の向こう側にいる人の「きれいな声」が決め手になりますから。


