短編さえ撮ったことがなかった
――脚本家として長いキャリアを持つ一方、今回は長編監督デビュー作です。文字をどう映像へ置き換えましたか?
ホー まず、すべてのシーンで「何を表現したいのか」という確信を持つことです。
例えばレストランで、ガラスに映った二人が背中を向けたまま話すシーンがあります。ガラスによって二人の感情が虚実入り混じっていることを、背中を向けることで、二人が別々の世界にいて、対面して話すことができない現実を表現したかったんです。
5年前なら、こういう演出はできなかったと思います。大きかったのは学校で教えた経験です。学生に「なぜこうするのか」「どうすればいいのか」を理路整然と説明するためには、まず自分自身が深く考えなければならない。
実はこの映画を撮る前、短編さえ撮ったことがありませんでした。自分では映画を一本も撮ったことがないのに、学生には映画の撮り方を教えていたんです(笑)。でも学生の作品を批判するだけではなく、改善案やトラブルの解決方法まで提案しなければならない。その5年間の経験が、今回実際の現場でとても役に立ったとしみじみ思いました。
札幌をクライマックスのロケ地に選んだ理由
――札幌のパートは映画のクライマックスです。なぜ札幌をロケ地に選んだのでしょうか?
ホー 最初は東京で撮影するつもりでした。でも予算的に厳しかった。香港国際映画祭のFILMARTで札幌フィルムコミッションと出会い、助成制度を知ったのがきっかけです。
実はそれまで札幌には一度も行ったことがありませんでした。でもリサーチしていくうちに、これほどこの映画にぴったりな場所はないと思うようになった。東京より生活のリズムがゆっくりしているし、景色にも広がりがある。
路面電車のシーンも、最初の脚本では東京の電車でした。でも東京ではサンドラとMCに気づかれず撮影するのは難しいし、札幌のように車両を一両貸し切ることも簡単ではなかったと思います。
助成金は一番大きな理由でしたが、最終的には札幌の雰囲気そのものが映画の展開にとても合っていた。札幌を選んだことは、たぶん神様からのプレゼントだったと思います。
『ラブ・ライズ』
監督・脚本:ホー・ミウケイ/出演:サンドラ・ン、MCチョン・ティンフー、ステフィー・タン、チャン・ファイホン、エモーション・チョン/2024年/香港/114分/配給・宣伝:サロンジャパン/©2024 Head Office Film Limited All Rights Reserved./9月4日(金)より全国ロードショー

