目立ちたがり屋な半面、聡明で優しい性格
金与正氏は目立ちたがり屋な半面、聡明で優しい性格だとされる。
2018年2月に金正恩氏の特使団として訪韓した際、金与正氏は韓国政府当局者との会談で、視線を決して下げず、「毅然とした威厳のある姿勢」を示した。一方、特使団の控室に出入りした当時の韓国政府当局者は、金与正氏が付き従う北朝鮮の部下たちに、食事などで困ったことがないか尋ねている様子を目撃した。
この当局者は「世間知らずの王女様かと思っていたが、案外、下の人間にも気遣いのできる人だと思った」と語る。
しかし、韓国に言及した金与正氏の談話は、どれも口汚く罵るのがお約束だ。北朝鮮では党大会から職場・地域単位の集会まで、実に様々な政治行事が開かれ、様々な人々が発言する。その際、求められるのは、忠誠心だ。
脱北者の一人は「自分の忠誠心を疑われないため、参加者全員が考えつく限りの大げさな表現を使っていた」と語る。党機関紙、労働新聞は社説にあたる「政論」を書くライターを何人も抱えている。そこでは、「最大限の表現」と党機関紙にふさわしい「威厳」をうまく組み合わせることが求められるという。
金与正氏の談話は、個人の人格を越え、韓流文化の流入によって北朝鮮の人々を惑わす韓国との交流を一切断つという北朝鮮の政策を体現したものだ。
2019年2月のハノイ米朝首脳会談で外交チームを率いたとされる金与正氏だが、会談決裂の責任を問われ、一時降格の憂き目に遭った。さらに現在は、金正恩氏の娘「キム・ジュエ」氏が台頭し、将来のナンバー2や後継者の座を脅かしかねない状況にある。ハノイでの苦いトラウマと、身内からの追撃――二重のプレッシャーに晒される与正氏にとって、外交での2度目の失敗は絶対に許されない。こうした追い詰められた立場もあって、彼女は独断を避け、周囲の専門家によるアドバイスを慎重に取り入れながら談話を練っているのだろう。