AIは基本的に「ゼロベース思考」

牛尾 人間ができないことを高度にコントロールしてやってくれるって、AIと一緒ですよね。

勝間 そうなんですよ。結局何のアルゴリズムが必要で、それに対して「どういうプロンプトを入れれば美味しい料理ができるか」という話なんです。

 最近私、Geminiと有洗米の炊飯の仕方について議論してたんですが、通常、お米は事前につけ置き(吸水)しないと美味しく炊けません。でも、私は時間を節約したいから、ヘルシオみたいな「ウォーターオーブン(160度)」に入れれば、加熱の過程で超高速に吸水できて、美味しく炊けるんじゃない? という話になって、やってみたら本当にその通りになった。

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牛尾 すごいAI活用(笑)。

勝間 AIって基本的に「ゼロベース思考」です。マッキンゼー時代に散々習いましたが、既存の枠組みにとらわれない思考法。だから、AIには理論的にはこういうことができる、でも現実的ではないという嘘もたくさん混じっていますが、私はそんな嘘の中から本当を見つけるのが楽しいんです。

勝間和代さん

牛尾 僕はエンジニアなので、いま仕事の大半はAI経由でやっています。Azureというクラウドサービスの担当で、世界中からインシデント(障害)の報告がきて各国のエンジニアが処理してくれるんですが、そこでも分からない難度の高い問題だけがうちの開発チームに来る。本来ならトップクラスのエンジニアが2時間くらいかけて取り組むような難問を、いまはAIが自律的に解決してくれるんですね。

勝間 AIってインシデント処理が得意でしょう。網羅的に全部やって可能性見つけて当てるみたいな作業が。

牛尾 そう、試行錯誤や検証が圧倒的に速いんですよね。イメージとしては、東大卒の自分よりはるかに賢いんだけど、世間知らず。うまいことできるフリをして嘘つく(笑)。嘘をちゃんと見抜く必要はありますが、それさえできれば無限に知識をもっているので非常に有能なんですよね。

AIの言ってることは「二次情報」に近い

勝間 『部下としてのAI』の中で書いてありましたが、基本的に自分が上司になればいいんですよね。AIが上司だったら超おバカでイライラするから(笑)。

 あと重要なポイントとして、AIの「記号接地問題」も指摘していましたよね。AIは感覚器や体がなく、記号にたいして実体的な理解を伴わないから、流れるように嘘をつく。だから、上司として私たち人間が、AIの情報を記号接地させて使う必要がありますよね。

牛尾 それは間違いないです。AIの言ってることって「二次情報」に近いんですよね。自分は経験してないけど知ってますよ、みたいな。これは人間で比べても明らかですが、どんなジャンルにせよ「二次情報だけ知ってる人」と「実際にガチで現場を知っている人」はレベルが全く違う。

牛尾剛さん

 実は最近、僕の推しのミュージシャンが僕の家に来てくれたことがあって、目の前でギターを弾いて教えてくれたんですよ。ブルース・ギタリストのヤング・レルが! 彼は将来グラミー賞とるんじゃないかと思うほどの天才ですが、彼から直接教わった時間は、もう10年分のギター練習に匹敵するような濃密な体験でした。

 記号接地している直の情報は、濃度といい伝え方といい、もう学びの深さが全く異なります。