「AIの取説としてこれ以上ない」と熱い反響を呼んでいる、米マイクロソフト・牛尾剛さんの最新刊『部下としてのAI 世界一流エンジニアの進化術』。ソフトウェア開発の最前線の知見から、AI時代にいかに人間の脳をブーストするか、学習加速術を伝える。
(※本稿は、前掲書から一部抜粋したものです)
◆◆◆
“認知的負荷をかける”アクティブリコール
ずば抜けたエンジニアたちは、ポールにしろプラグナにしろ軒並み記憶力が強力だ。例えばプラグナのスタイルを観察すると、一つひとつを丁寧に理解し、想起(リコール)して、人に伝えることで記憶に定着させている様子が伝わってくる。
仲間たちを観察していると、大なり小なり行っているのは「アクティブリコール」――つまり、学んだ内容を「何も見ずに思い出す」ことで記憶に定着させる王道のメソッドだ。これは最も強力かつ、科学的に確立された記憶の必殺技である。
有名な方法なので、「なんだ、そんなことか」と思った方、どのくらい実践できているだろうか。かくいう私も知識としては昔から知っていた。ADHDなこともあって記憶するのが苦手だったが、近年アクティブリコールをきちんと理解して仕事で実践するようになってから、大幅に改善されたのだ。最近は記憶への苦手意識はほぼなくなった。
ノーヒントの何もないところで「想起する」ことが、記憶の定着の鍵となる。これは脳にとって認知負荷が高い状態で、ジャスティン博士が言うところのコグニティブロード(Cognitive Load Tolerance)だ。しっかり負荷をかけてこそ、脳の処理能力を上げることができるのである。
私のベーシックなアクティブリコールの実践法は、こうだ。
仕事終わりに、今日やったこと、理解したことを整理して、思い出す。まず頭の中で整理してから、書き出すようにする。そして翌朝もう一度思い出すようにしてみる。
先にも触れたように、会議のあとは何も見ずに内容を思い出しながら、箇条書きで議論の中身を書いている。その後、AIの議事録を見返しながら理解が浅いポイントをTeamsのCopilotなどで調べ、まとめたノートをOneNoteに貼り付けておく。
あるいは趣味のブルースの演奏でいうと、英語の歌詞を覚えるとき、一行ずつ歌いながら思い出している。雑に何度も反復するというよりは、ニュアンスやアクセントも正確に、一行一行きっちりと想起し、きちんと思い出せたら次の行に進むイメージだ。歌いながら思い出すのは認知的負荷が高いが、この方法だと一日で曲全体の歌詞を正確に覚えられるようになった。

