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押し倒しているところに旦那が乱入
被害を受けた女性にとっては迷惑極まりない話だが、正甫も計画的な犯行ではなく、性欲に負けた突発的な行動だった。ある意味、魔が差したのであろう。しかも、農婦を押し倒しているところに、なんと彼女の旦那が入ってきたのである。
現場を見た夫は激怒し、妻を助けようと正甫に殴りかかっていった。驚いた正甫は腰に差していた刀の鞘を払い、襲ってきた夫の腕を切り落としたのだ。
騒ぎに気づいて近所の人びとが集まり始めたとき、ようやく家臣たちもやってきた。正甫は後始末を家臣に任せ、自分は逃げるようにその家から立ち去った。
夫に強姦未遂が見つかったとき、刀を抜いたら即座に夫を斬り殺し、妻も殺しておくべきだった。死人に口なしである。武士の無礼打ちは許されていたから、どうとでも言い逃れはできたはず。それをしなかったのは、襲い来る農婦の夫に、慌てて刀を抜いて振り回したからだろう。
腕を切り落とされたものの、農婦の夫は運よく命を取り留めた。このため、正甫の家臣たちは農民夫妻に大金を渡したうえ、なんと彼らを浜松城下に連れてきて、屋敷まで与えて安楽な生活をさせた。それはもちろん、藩主正甫の強姦未遂を示談で済ませ、その不始末が幕府に露見しないようにするためだった。体よく農民夫妻を監視下に置いたわけだ。
