外交官からIT企業の幹部、そしてAIスタートアップの経営者へと転身した異色の経歴を持ち、世界の最前線で日本のAI産業を牽引する伊藤錬さん(Sakana AI 共同創業者・社長)が、人生で影響を受けてきた本について語りました。(取材・構成 稲泉連)
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知的な熱量に満ちていた1990年代半ばの東大駒場キャンパス
本は自分の日常の中に当たり前にずっとあった。ただ、読書そのもののあり方がぐっと深まり始めた時期と言えば、やはり大学に入ってからのことでしたね。
1996年に東大の駒場に入学したのですが、あの頃の駒場というのは、知的な熱量が本当にすごかったと思います。
小林康夫先生や船曳建夫先生が中心になって作った『知の技法』というテキストが大流行していて、表象文化論やテクスト分析を学ぶ場としても刺激的でした。オランダ人の建築家レム・コールハースの『錯乱のニューヨーク』を片手に自転車で東京中を回り、都市の建物に意味を読み込もうとするような同級生もいて刺激を受けたものです。
その頃、「ああ、そういうことか」と気づいたのが、自分の読書には2つの方向性があるんだということでした。1つは、自らの内側に沈んでいく読書。もう1つは、外の世界へ向かっていく読書。どちらも必要なもので、人によって、時期によって、どちらの引力が強く働くか違ってくるものだと思います。


