被疑者から「飼い猫が死んじゃうといかんので…」と

「一人暮らしの被疑者が猫を飼っとって、それが自宅に残されたままになった。それで、被疑者から『飼い猫が死んじゃうといかんので、連れに連絡してほしい』と言われたとするじゃないですか。『僕の携帯に連れの連絡先が入っとる。うちの部屋の鍵もあいつが持っとるから』ってね。こういう相談も受けちゃいかんのです。便宜供与になるからって。だけど、いくら便宜供与だといっても、ペットの命がかかっとるわけですよ。そこまでするのはおかしいんじゃないかと思います。まあ、さすがに最近は改善されたみたいですけどね」

 小池さんによれば、取調べの際に「取調官と被疑者の信頼関係を構築して、情理で被疑者を落とすこと」が望ましいという。

「そんな取調べの最上級を行くのが、被疑者に自身の罪と向き合う考えを持たせて自供させること。これができれば真の反省の言葉が語られます。それこそが再犯の抑止、更生にもつながると私は思っていますし、これまでの取調べでも実践してきました」

ADVERTISEMENT

「潜在殺」の小池

 そんな小池さんはかつて「潜在殺の小池」と称されていたそうだ。「潜在殺」について説明しておくと、日本での行方不明者数(警察への届出数)は、年間およそ8万人から9万人。このなかには、犯罪に巻き込まれるなどして、生命又は身体に危険が生じた恐れのある、「特異行方不明者」も含まれている。そのような、家出や失踪と判断されたが、遺体が発見されない状況で殺害されている状況のことを、「潜在殺」と呼ぶのである。

「潜在殺」は計画性が高く、犯行が発覚しないように手を加えられているものがほとんど。そのため、殺害日時、殺害場所、殺害方法等がはっきりしない。周辺捜査の結果、明らかに事件に巻き込まれている「特異行方不明者」について、失踪に深く関わった関係者をあぶり出し、任意の取調べによって「落とし」て、逮捕に持ち込む。そうした流れで事件の全容を解明することを、小池さんは得意としていた。

「潜在殺は愛人を殺しただとか、自分の女房を殺しただとか、そういうことをした人間が、『警察からああ言われたらこう言い返そう』と理論武装をしていることが多い。だから、相手を上げたり下げたりする言葉を発しながら、心のどこに刺さるかを見ていく必要があるんです。もちろん、こちらは事前に相手のことは調べますよ。前科前歴から家族構成、親友だとか仕事だとかね……」