日本は「スパイ天国」と言われる。どうやって技術や情報が持ち出されているのか。元警視庁公安部外事課の勝丸円覚さんは「後継者のいない中小企業が会社ごと買われ、技術を社内移転の形で海外へ持ち出されるケースがある。さらに、ある法人を取得すれば、森林や水源地だけでなく、人脈や個人情報まで手に入る。こうした手口はスパイ防止法だけでは防げない」という――。(第2回)

※本稿は、勝丸円覚『日本を静かに侵食するスパイの手口』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/mapo ※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

中小企業、地方の企業こそ狙われる

昔も今も、スパイが狙う対象の中に企業があることは変わりません。ただ、現代ではその意味がさらに大きくなっています。

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かつては、軍事情報や政治情報が中心でした。それももちろん重要ですが、現在は、企業が持っている技術、情報、人脈、さらには企業同士を結ぶネットワークそのものが、スパイにとって極めて大きな価値を持つようになっています。

特に注意してほしいのは、中小企業や地方の企業です。

大企業は狙われても、防御のための部署があり、専門人材もいて、システムにも投資している。ところが、中小企業や地方企業では、そこまで手が回らない。日々の経営に追われ、技術や製品の開発に忙しく、セキュリティーの勉強や教育にまで時間も人手も割けない。結果として、狙われたときに侵入されやすいのです。

中小企業の経営者の方と話すと、「うちなんか町工場ですよ」「地方の小さな会社ですから」「こんな技術、スパイがほしがるわけがないじゃないですか」という反応がよくあります。

しかし、そこがまさに危ないところなのです。日本国内だけを見れば、確かに競合他社がいて、特別に目立たない技術かもしれません。ところが、その技術を国外に持っていったらどうか。

盗まれた技術情報が、特許申請されていたことも…

たとえば、日本より技術水準の低い国に持っていけば、それだけで十分に価値がある。軍事転用できるものでなくても、国営企業やその国の産業全体の底上げに使える可能性があります。