実際、サイバー攻撃でも同じことが起きています。大企業本体は守りが堅くても、取引先や関連会社の守りが弱ければ、そこから入られてしまうのです。

そして怖いのは、何もハッキングだけが侵入手段ではないということです。もし社員がうっかり暗証番号を教えてしまったり、机の中にメモを残していたり、パソコンのログイン情報を簡単に見られる状態にしていたら、サイバー攻撃をしなくても「正式に」入れてしまう。

つまり、技術の話だけでなく、人の話でもあるのです。

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会社を買えば“合法的に技術を盗める”

もっと大胆な動きもあります。それが企業の買収やM&A(吸収・合併)です。

技術だけを盗もうとすると、外事警察も動きやすい。誰が誰に何を渡したのか、持ち出しの経路も追いやすい。しかし、最近では、技術を抜くのではなく、会社ごと買ってしまうやり方が増えているのです。

・後継者がいない
・経営者が高齢になっている
・経営そのものも厳しくなっている

そうなると、買ってくれる相手に譲るというのは、経営者から見れば自然な判断です。従業員も残る、会社も続く、技術も消えない。一見すると救いに見えます。

ところが、その買い手が外国資本の影響下にある会社だった場合、話はまったく変わってきます。

会社を買収した後で、たとえば上海支店などをつくり、そこに技術を移してしまえば、それはもう単なる社内の移転に見えてしまう。技術だけを国外に持ち出したら規制されるようなものでも、会社ごと買われてしまえば、「正当なビジネス」の顔をして出ていけるのです。

「正当な商行為」ならスパイ防止法でも取り締まれない

ここに、今の日本の大きな弱点があります。本来であれば、国外流出から守るべき技術を持った企業が、後継者不足や経営不安をきっかけにM&Aに応じ、その結果、技術ごと実質的に海外に移っていく。

これは合法的な商取引の形を取る分、むしろ止めにくいのです。

スパイ防止法ができたとしても、それはスパイ行為を取り締まる法律です。一方、会社を売る、M&Aをするという行為そのものは、基本的には正当な商行為です。だから、警察だけでは守れません。