本来であれば、その技術は正当に買わなければいけないものです。ところが、それを盗んで持っていけば、相手はただで使える。さらに改良されて、逆に日本企業の競争相手として戻ってくることすらある。

特許申請前の技術なら、なおさらです。盗まれて先に申請されてしまえば、特許権を取られる可能性がある。

実際に、日本企業の中で、中国籍の社員が社内の情報を抜き取り、それを外部に送ったケースもあります。しかも、送られたのは、まだ特許申請前の技術情報でした。その社員は後に別の会社に移りましたが、ログを確認すると、本人の業務とは関係のない部署の情報に何度もアクセスしていたことがわかった。さらに、その情報が送られた直後に、外国側で特許申請されていたことまで判明した。こういうことが、現実に起きているのです。

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狙われるのは工業製品だけではありません。農業もそうです。他にも、和牛やウナギの養殖技術など、日本の技術やノウハウが詰まっているものであれば、何でも対象になり得ます。

実際、日本でしか出回っていないはずのシャインマスカットの苗木が海外に流出し、生産されているとして問題になっています。これは一部の特殊な話ではありません。取れるものは何でも取る。使えるものは何でも使う。これがスパイや産業工作の基本姿勢です。

「人そのもの」「人脈」が狙われる

つけ加えると、スパイがほしいのは、その会社の技術そのものだけとは限りません。スパイはその人が持っている情報や人脈をほしがることがあります。

・その人のパソコンの中にある連絡先
・携帯電話の中のリスト
・取引先や共同研究先、グループ企業とのつながり

そうしたものを踏み台にして、さらに先へ入っていこうとする。これは企業でも同じです。

たとえば、その中小企業が、より大きな企業グループや取引ネットワークに入っていたとします。LANでつながっている、あるいは業務上のシステムが連携している。そうすると、セキュリティーの弱いその一社を突破口にして、もっと大きな相手に入り込むことが可能になります。