2019年に発生し、社会に大きな衝撃を与えた「池袋高齢者暴走事故」。遺族の松永真菜さんと莉子ちゃんへの深い悲しみが広がる一方、加害者の飯塚幸三氏は沈黙を保ち続けていた。

 書類送検が目前に迫る中、自宅前で張り込みを続けていたTBS記者の守田哲氏は、偶然にも一人で歩行訓練をする飯塚氏の姿を捉える。

 取材に応じた飯塚氏の口から飛び出したのは、「安全な車を開発するように、メーカーの方に心がけていただき……」という耳を疑う言葉だった。2本の杖にすがり、目線を頑なに下へ向けたまま語るその姿と、事故をどこか「他人事」のように捉える姿勢の裏にあったものとは――。

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 記者が見た「飯塚幸三のおごり」の正体を、TBSテレビの守田哲氏の新刊『池袋高齢者暴走事故 遺族と加害者家族の2060日』(文藝春秋)より一部抜粋して届ける。(全2回の1回目)

生前の飯塚幸三氏(写真:時事通信社)

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飯塚幸三の“おごり”

 松永は発信を続けていたが、飯塚は沈黙を貫き、取材も一切受けていなかった。

 2019年10月下旬、飯塚が近く書類送検されるという感触を得た私は、本人のコメントを取ろうと、自宅マンション前に断続的に張り込んだ。

 その一方、飯塚は24日、目白署横の警視庁目白合同庁舎の駐車場を訪れた。警視庁による飯塚の取り調べは、これが最後となった。

 この日は、飯塚から調書を取らずに、事故車両を初めて見せた。飯塚は実際に車と被害者が接触した部分を己の目で確認し、「ひどい壊れ方ですね……」と頭を垂れ、厳粛に受け止めた。当時の私はそんなことはつゆ知らず、張り込みを続けていた。

 そして、26日土曜日の昼、飯塚本人がマンションの半地下の駐車場に突如現れた。サングラスやマスクはつけていなかった。歩行訓練をしていたようだ。

 少し離れた場所で待機していたカメラマンを呼び、路上から飯塚に声をかける。

「被害者に対して思うところはありますか」