10歳女児が50歳の男と結婚させられたケースも

 児童婚をなくすための活動を展開している人でもこうした慣習に介入するのはとても難しいのだ。ある活動家の話では、ある父親が「娘の結婚を遅くするのはいいが、あんたが守ってくれるのか」と言ったという。つまり、娘が結婚前にレイプされたらどのように責任をとるのか、ということだ。

 しかし、次のような話もある。イエメン西部のある村で、アイーシャという10歳の女の子が50歳の男と結婚したというのだ。ある人は、まるでネズミがゾウと結婚するようなものだ、と言った。

 一夫多妻の伝統が残るイエメンでは、「シガール」という慣習があり、男性同士が互いの親族の女性を妻にするという。しかも、お互いの娘と結婚することが多いのである。女性が個人の意思と愛情に基づき伴侶を選ぶ、という規範とは程遠い世界が存在するのである。

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 アイーシャに話を戻すと、彼女は結婚相手を見たときに悲鳴をあげたという。彼女は、いやいやながら結婚したが、毎日姉に泣きながら電話をかけてくるという。

 同じくイエメンのノジュオド・アリの話は、児童婚防止の象徴的な存在として世界中の注目を集めた。彼女の父親は、彼女が10歳のとき、娘より3倍以上も歳をとった男に嫁がせたのである。しかし、ノジュオドは結婚後しばらくして夫の家から逃亡し、実家に戻った。

10歳で結婚させられたノジュオドは後に『わたしはノジュオド、10歳で離婚』という書籍を出版した。日本でも2010年に河出書房新社から発売されている(Amazonより)

 父親は娘を𠮟りつけたが、父親の2番目の妻が彼女にタクシー代を与え、裁判所に行くように教えたという。彼女は、裁判所の判事に「離婚したい」とはっきりと告げた。ノジュオドには著名な弁護士がつき、離婚訴訟を起こした。訴訟の様子はイエメン国内だけでなくやがて世界にも伝わるようになった。2008年に彼女が離婚を勝ちとったとき、傍聴席からは大きな歓声があがったという。

 ノジュオドはその後、米国に招待され、そこでも多くの賞賛を受けた。彼女は、世界各地を訪れ、講演会に招待され、インタビューを受けた。彼女は自宅に戻り、学校にも通ったという。ノジュオドはイエメンの親たちに向けて公開書簡を発表した。「子どもを無理に結婚させないでください。小さい子を結婚させたら、教育が受けられません。子ども時代が台無しになってしまいます」と。その後、ノジュオドの自叙伝『わたしはノジュオド、10歳で離婚』が出版され、30カ国語に翻訳された。

 児童婚を防止する国際的なキャンペーンでは、当事者の少女たちが主体的にその先頭に立っている。イエメンの12歳のリームという少女は、ノジュオドの裁判の数カ月後に離婚の判決を勝ちとっている。インドの11歳のスニルという少女は、結婚式が始まる直前に結婚はしないと両親に宣言した。無理やり結婚させるのなら、両親を警察に訴えて、父親の首の骨をへし折ってやると言い放ったという。

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