本物の外箱とホログラム
個人納税者を担当する課税第一部は、大阪城に近い15階建ての大阪合同庁舎第3号館に入っている。模造iPhoneの一件は、同部の消費税担当官らが対応にあたったとみられる。模造品ではあるが、通関書類上はすべて真正品と届けられていた。つまり、iPhoneの正規輸出を装って、消費税の不正還付を狙った疑いが濃厚だった。不正還付の道具となる模造品が輸出の水際で発見されるケースは極めてまれだ。
消費税の不正還付については少し説明が必要だろう。消費税は、負担する人(消費者)と納税する人(事業者)が異なる間接税の一つ。事業者は、商品を売った際に受け取った消費税から、商品を仕入れた時に支払った消費税を差し引いて納税する。業者が仕入れで支払った分が多ければ申告後に還付される。輸出販売には消費税がかからないため、仕入れ時に払った消費税は、申告すれば還付されることになる。この仕組みを悪用するのが不正還付だ。
大阪税関が押収したiPhone約200台は、すべて「iPhone15 Pro Max(1台約20万円相当)」の模造品で、外観は真正品と見分けがつかない精巧な作りだった。このレベルの模造品が大量に見つかった例は過去にないという。
さらに、iPhoneの製造・販売元のアップル社に照会したところ、外箱、偽造販売防止のホログラム、シリアルナンバーは、すべて正規のものだと判明した。これには大阪税関の発見を知る関係者らも首を傾げるしかなかった。
「これだけ大量の真正品をどのように入手したのか。どうやって盗用しているのか」
模造iPhoneの輸出元として登録されていたのは、神戸市にある「清盛商事」だった。東京商工リサーチによると、同社は神戸市内に宝石、貴金属、腕時計、ブランド品などの買い取り店舗を持ち、その品物を香港に輸出する事業を中心に展開している。
※この続きでは、模造iPhoneを使った不正還付事件の顛末を詳報しています。約7800字の全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア『文藝春秋PLUS』と『文藝春秋』2026年9月号に掲載されています(市田隆「iPhone、近鉄百貨店…消費税不正を追え」)。
■市田隆(いちだ・たかし) 1964年生まれ。1988年読売新聞社入社。2003年朝日新聞社入社。司法記者クラブキャップや、調査報道担当編集委員を歴任。共著に『原発利権を追う』など
出典元
【文藝春秋 目次】芥川賞発表 受賞作全文掲載 小砂川チト「ゾンビ回収婦」/「高市総理よ、日本を壊すな」細川護熙/がん15部位 早期発見ガイド
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