この夏、実は2つの恐竜映画が公開されていたんです。しかも舞台は現代ではなく60年代と80年代。偶然? 必然? ちょっと大人の目線で、アメリカンドリームが“絶滅”に向かい始めた後者の作品をチェックします!
今週のターゲット『オークストリートの異変』
〈あらすじ・概要〉1982年、平和な街オークストリートで暮らす一家を突然の異変が襲う。水道や電気が止まり、ついには恐竜までが出現! 一家4人は無事に生き残れるのか? J.J.エイブラムス製作、『イット・フォローズ』のデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督。アン・ハサウェイ、ユアン・マクレガー出演。100分。公開中。
◆ ◆ ◆
『オークストリートの異変』でまずチェックしたいポイントは、豪華な主演夫婦です。夫役は『スター・ウォーズ』シリーズのユアン・マクレガー。妻役は『プラダを着た悪魔2』が記憶に新しいアン・ハサウェイ。つまり、オビ=ワンとキャットウーマン。この2人なら、どんな異変だって切り抜けられそう!という与太話はここまでとして(笑)。
時は1982年。アメリカが誇る大手自動車会社クライスラーに勤めているはずの夫は、なぜかピザのデリバリーでアルバイト中。その理由を知った妻は、募る不満を、趣味で執筆している小説の中で発散。まさに夫婦は崩壊寸前で、2人の子供たちも心配するほどの不和状態なのです。
さて、世情に通じている読者諸氏であればお気づきでしょう。80年代のクライスラーといえば、オイルショックや日本車台頭などのあおりを受けて倒産寸前にまで追い詰められていました。つまり、アメリカは深刻な不況の真っ只中。10%近い失業率をふまえれば、夫の境遇も納得の設定なのです。世界一豊かな国を支えていた自動車産業が揺らいだことで、真面目に働けば家を持ち、家族を養い、幸せになれるというアメリカンドリームが疑われ始めた時代。そこへ、かつての絶対王者、恐竜の到来。何とも意味深じゃありませんか!
ストーリーとしては、ある日突然、この街だけが恐竜時代になって(時代が入れ替わって)しまって、さあ大変、というシンプルなもの。原因追究をする間もなく、(特に前半は)逃げるしかありません。そういう意味ではいわゆるパニック映画に違いないのですが、監督の手腕が見事なのは、ただ恐竜をドーンと見せて終わりじゃないところ。迫ってくる不安。何かがおかしい。いつもの街なのに、少しずつ日常が狂っていく。その先に出現する究極的に最悪なものの象徴が恐竜。こう考えると、本作で本当に襲われているのは何なのか、考えたくなってきます。
仕事がある。家がある。家族がいる。明日も今日と同じ生活が続く。その先に待っているのは成功と安泰――。そんな“普通のアメリカ”が脅かされている。例えば『ゴジラ』が原水爆のメタファーだったように、本作の恐竜とは、80年代のアメリカ人の不安のメタファーなのではないか……。
ベトナム戦争下のジャングルに現れた恐竜の大群と米軍精鋭部隊との死闘を描く。『プラトーン』『プライベート・ライアン』の軍事専門家による監修も話題。ルーク・スパーク監督。133分。公開中。
同時に、ふと、今、世界中で起きている自然災害についても思いを馳せてしまいました。災害は常に想定外ですし、それこそ突然出現した恐竜のように手に負えません。そういう時代に、私たちは生きているのですね、としみじみ。では、今夏公開のもう一つの恐竜映画『プリミティヴ・ウォー 恐竜戦争』で描かれた恐竜とは? 見比べて、考察してみるのも一興かも。




