罪を告白した元スタッフ
ところが5日後、井上から〈申し訳ありません。先週より風邪をこじらせていまして返信遅れました〉とメールが返ってきた。だが、続く文は、〈また時間あるときに連絡いたします〉とだけあり、こちらの取材依頼に対しての回答はなかった。
井上が私のメールをどう受け止めているかわかりかねた。文面には突然の週刊文春記者からの連絡に対する驚きや、ジュニアたちへの性加害疑惑が自らに向けられていることに対する怯え、怒りといったニュアンスもうかがえなかった。私は再びメールを送り、返信へのお礼と週末に会ってもらいたい旨を伝えた。
その2日後、予想外の返信があった。まだ体調が優れないという前置きの後に、
〈来週末にお時間お願いできますか?〉
と、会うことを承諾する言葉があった。
「すごいですね」
遠藤と西山も私がメールで口説き落としたことを驚いている。だが私が一番、不思議だった。はたして本当に彼はやってくるのだろうか。何度も、追いかけている相手にドタキャンを食らったことのある身としては、まだ安心できなかった。
だが約束通り、その1週間後、私たちが指定した有楽町の貸し会議室に井上は現れた。
キャップとマスクを着けた井上は当然ではあるが、かなり警戒しているようだった。私と遠藤は事前の打ち合わせ通り、ジュニアへの性加害については後半で訊くこととし、最初は井上が話しやすそうなジャニーズ事務所での仕事内容など、経歴から聞いていくことにした。
井上は、あなたたちは全然わかってない、といわんばかりの上から目線の喋り方だった。
私たちはジャニーズ事務所内でのジャニー、経営面を担う姉のメリー喜多川、そしてメリーの娘の藤島ジュリー景子、この3人のパワーバランスなどを、教えを乞うスタンスで訊きながら、いつ井上自身の問題に切り込むか、慎重にタイミングを見計らっていた。
すると突然、井上のほうから、自分の罪について告白を始めた。
取材は3時間に及んだ。
井上の告白は衝撃的だった。私は重大な話であればあるほど、平静を装って聞くことを旨としている。リアクションで相手を動揺させて話すのを止めたくないからだ。このときも驚きを必死で抑えながら、質問を重ねていった。
だが――。
私たちは井上の話をすぐ記事にはしなかった。
その直前、私たちが待ち望んでいた証言者が現れたからだ。《続く》
この続きは「週刊文春 電子版」で読むことができる。この回だけでなく、髙橋氏がジャニーズ問題の取材を振り返る連載「Voices 週刊文春ジャニーズ取材班の290日」のすべての回は「週刊文春 電子版」で読むことができる。第8回では井上氏の告白について詳しく取り上げている。

