2019年4月19日、東京・池袋で起きた高齢ドライバーの暴走事故。愛する妻と長女を一度に奪われ、絶望のなかで泣き崩れた遺族の松永拓也さん。

「金や反響目当て」「そんな父親、天国の2人が喜ぶとでも??」――裁判が終わったあともSNSで苛烈な誹謗中傷を受け続けた松永さんは、悲しみと怒りのなかで警視庁への被害届提出を決意する。

 事故被害者への容赦なき中傷に走った「投稿者」の正体とは? 記者として長年、同事故を取材してきたTBSテレビの守田哲氏の新刊『池袋高齢者暴走事故 遺族と加害者家族の2060日』(文藝春秋)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目)

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交通事故で妻と娘を失った松永拓也さん(写真:時事通信社)

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指先ひとつで

 SNSで誹謗中傷を受けたのは、加害者側だけではない。遺族も攻撃を受けていた。

 松永拓也の顔写真に「駄々こねるな 事故で妻と娘を亡くしただけだろ 死ね 消えろ ぶっ殺すぞ」という文字が書き込まれた動画が投稿されるなど、嫌がらせ行為がたびたび発生していた。

 裁判が終わってから半年ほど経った二〇二二年三月、松永は自分のTwitterの投稿に見知らぬ人間から、こんなメッセージが返信されていることに気づいた。

〈金や反響目当てで、飯塚昭三先生(原文ママ)と闘っているようにしか見えませんでしたね。/そんな父親、天国の松永莉子ちゃん(3歳)と松永真菜さん(31歳)が喜ぶとでも??〉

 松永は頭が真っ白になり、怒りと悲しさで気づいたときには涙を流していた。