「あれっ、もしかして……」
というのもその1年前、僕がプロに入って最初の名護キャンプの時、栗山さんがテレビのキャスターとして取材にいらしていて、来賓室で練習を見ていたんです。その時にお目にかかって、「佑樹、どう? 調子は」と聞かれたんですけど、その感じが取材目線じゃなかったんですよ。
貴賓室で「どう?」って、もう球団関係者じゃないですか(笑)。あれっ、もしかしていずれ監督でもやるのかなって、そんな雰囲気を感じたんです。僕の勝手な想像ですけど、あの時期、すでにその可能性はあったのかもしれませんね。
栗山監督の最初の印象は、想いの強い監督だな、ということでした。戦術とか戦略よりも、想いが大事。想いによって人は動くし、信じることによって選手が期待に応える。そこは10年間、最初から最後まで変わりませんでした。
いつも監督のほうから右手を差し出して、「最近、調子はどうだ」と聞いてくれる。毎日、最初に会うたびに握手をするんです。で、「今日はどう?」と、何かを答えさせる聞き方で入るんです。二軍から一軍へ上がった時も二軍に落ちる時も、監督は必ず握手をしてくれました。
ファイターズでは高卒5年目、大卒と社会人出身2年目までの選手を対象に毎朝、いろんな人が講義をしてくれます。その講義に、監督に就任した直後の栗山さんが来て下さったことがありました。その時に栗山さんは、野村克也さんの話をしていて、自身のことはあまり話をされなかった。だから、栗山監督の考えはどうなんだろう、どういう野球をやりたいんだろうと、その時は消化不良な感じでした。
でもそのうちに、こういう野球をやりたい、ということを掲げるのではなく、選手にどういう野球をやりたいのかを考えさせて、それをサポートするためにアドバイスをしようとしている……それが栗山監督のイメージする野球だったのかと思うようになりました。
野村さんだけではなく、栗山さんのいろんな出逢いから得たヒントを、「斎藤佑樹にはこれが当てはまるかもしれない」「乾にはまた違うヒントがあるのかもしれない」「榎下にはどれがいいのか」と、それぞれが投げる姿を見て、話を聞いて、引き出そうとする……それが“栗山野球”というものなんだと、今となってはよくわかります。
