静岡県沼津市などで女性2人が犠牲となった「静岡2女性殺害事件」。犯人の桑田一也死刑囚により実の母親を殺められた被害者長女が、事件から14年の時を経て初めて当時の記憶を語った。

 犯行当日、長女が母に見た「ある違和感」とは――。ノンフィクションライターの高木瑞穂氏の文庫新刊『殺め人』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目)

写真はイメージ ©getty

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初めて語られる犯行日前夜

「あのとき昼寝しててよかったね。もし起きていたらアンタも殺されていたよ」

 結海さんは、あるとき祖母からそう言われたと振り返る。それはなぜか。あのときとはいつのことか。それを知るのは遺族のなかでも「私ひとりだけ」と前置きして結海さんが話してくれた。結海さんの証言などから、改めて犯行日前夜を詳しくたどる。

 一家はまず、その少し前に御殿場市内の自宅一軒家から、犯行現場となった静岡・東部の清水町のアパートに移り住んでいた。アパートはメゾネットタイプで、1階は居間、2階は子ども部屋と夫婦の寝室だった。

 いつものように居間で髪を結んでくれていたとき、家のこと頼んだよ、と紘子さんに言われたのは、紘子さんが行方不明になる朝だった。その言葉は、いつもは会話すらないなか「そんなこと初めて言われた」から、結海さんからすればどこか違和感があった。

「何かヘンな感じでした。いま思えば、殺される予感がして、ママは妹のこととかを『頼んだよ』と言ったのかも。なんか、お願いね、みたいな口調だったので」