『どろぼうジャンボリ』(阿部結 著)

「絵童話」というジャンルをご存知だろうか? 赤ちゃんや幼児など低年齢層向けの絵本と、文字が主体の児童書のあいだをブリッジすることを目的として、近年、児童書を手掛ける版元が積極的に打ち出しているカテゴリーだ。代表的な作品として『たまごのはなし』(しおたにまみこ、ブロンズ新社)などがある。

 本書もそんな絵童話のひとつ。『ぴったんこ』(福音館書店)などの人気絵本で知られている著者が初めて挑戦した絵童話で、書店での地道な広報展開や、読者の口コミを通じてじわじわと部数を伸ばしている。

「読み聞かせの時期が終わったお子さんが自力で読書するようになる前に、刺激が強くてわかりやすいショート動画やゲームに流れてしまう。そうした世の中の構造があることが気になっていて、その隙間に入り込めるような魅力的な絵童話をもっと増やしたいと考えていたところに、著者から絵童話形式のラフが届いたんです」(担当編集者の沖本敦子さん)

ADVERTISEMENT

 主人公は、バケツを被ったような見た目が印象的な泥棒・ジャンボリ。みんなが寝静まった夜に、なんらかの理由で出されずに家のゴミ箱に捨てられた「てがみのたね」を集めている風変わりな泥棒だ。しかしあるとき、新しい町長が手紙禁止令を出してしまい、ジャンボリの密かな楽しみは終わりを迎える。代わりに宝石や美術品、大量のお金を盗んでみても、心が満たされないジャンボリは、町を出て行くことに。これまで集めた「てがみのたね」を詰め込んだ大きな宝箱を持って家を出たが、うっかり宝箱の鍵をかけ忘れて……。

 物語の終盤、とあるきっかけで町長に町の人たちからの手紙が届くことで、物語は大きく動く。緻密で温かみのある絵とともに語られるそんな物語は、民主主義を巡る寓話のよう。思わず大人も考えさせられる。

「5、6歳くらいを主な読者に想定していましたが、だからといって子供向けに内容を寄せようとは考えておらず、むしろ大人と子供で読書会ができるような本にしたいと思っていました。実際に『大人が読んでも感動した』という声も届いています」(沖本さん)

 また、本書は紙の手紙を書くきっかけにもなっているとか。さまざまな形で世代や環境を超えたやりとりを生みそうな本だ。

2025年4月発売。初版7000部。現在10刷5万部(電子含む)

どろぼうジャンボリ

阿部 結

ほるぷ出版

2025年4月10日 発売