NHK連続テレビ小説『風、薫る』が、いよいよクライマックスに差しかかっている。
見上愛演じる一ノ瀬りんと、上坂樹里演じる大家(小川)直美。2人のトレインドナースが看護の未来を切り開いていく本作で、物語の鍵を握る人物の一人が、中村倫也演じる柳生藤次だ。
実は中村にとって、朝ドラは特別な意味を持つ枠でもある。確かな演技力を持ちながら、不遇の若手時代を過ごした中村は、31歳で出演した『半分、青い』をきっかけに一躍脚光を浴びた。デビューから13年、地道な下積みがようやく花開いた瞬間だった。
“メンヘラ製造機”、変わり者の探偵、一人7役…次々と力量を発揮
ブレイク後も、中村はその演技力を存分に発揮していく。2019年のドラマ『凪のお暇』(TBS系)では、“メンヘラ製造機”こと安良城ゴンを好演。柔らかな声と穏やかな佇まいで、その優しさが救いにも毒にもなる人物を体現し、多くの視聴者を“ゴン沼”へ引きずり込んだ。
翌年の主演ドラマ『美食探偵 明智五郎』(日本テレビ系)では、容姿端麗ながら超がつくほど変わり者の探偵・明智五郎を熱演。古風な装いに独特の口調、優雅な物腰でコミカルさを醸し出す一方、殺人鬼・マグダラのマリアに心を奪われていく情念もにじませ、中村の持つ色気を存分に生かした。
映画では、2020年の主演作『水曜日が消えた』で、曜日ごとに人格が入れ替わる主人公を一人7役で演じた。それぞれの違いをことさらに強調するのではなく、一人ひとりの生活感が佇まいから自然と浮かび上がるように表現。派手な変化に頼らず、7つの人格を別々の人物として成立させる繊細さに、中村の俳優としての力量が表れていた。
その後も映画『宇宙人のあいつ』、ドラマ『ハヤブサ消防団』(テレビ朝日系)、『DREAM STAGE』(TBS系)など、主演作が相次ぐ。かつては端役やゲスト出演が中心だった中村が、今やドラマから映画まで、作品の顔として物語を牽引する存在となった。
