「日本ボクシング史上最高傑作」と称される兄・井上尚弥、そして現・WBC世界バンタム級王者の弟・井上拓真。彼ら最強兄弟の父であり、トレーナーを務めるのが、井上真吾氏(55)である。本業の傍らアマチュアボクサーとしても活動していた真吾氏が、幼少期から2人にボクシングの手ほどきをしたのは有名だ。以来、“三人四脚”の歩みで2人を王者にまで育て上げた。
今日9月27日、拓真の防衛戦を控える最中、真吾氏が世界王者の近況を語った(構成・二宮寿朗)。
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「今の拓は、本当に右肩上がり」
──8月に出版された真吾さんの著書『拳闘魂』には、2人の激闘譜が綴られています。直近の試合を振り返ると、5月、東京ドームで尚弥選手が同じく無敗の中谷潤人選手の挑戦を受け、3-0判定で退けました。
井上 尚がプレッシャーを掛けて、中谷選手を中に入らせない戦い方はイメージ通りでした。尚のほうがスピードはあると思っていましたし、そのスピードと勘で中谷選手のパンチを外し、逆に浅くてもパンチをヒットさせることができていた。自分の距離感をしっかりキープできていた点が良かったと思います。
──11ラウンドに尚弥さんの右アッパーがクリーンヒットしました。中盤のラウンドから真吾さんが「右アッパーだぞ」と繰り返し指示を送っていたのが印象的でした。
井上 対サウスポーだと逆に相手の左アッパーが怖いんですけど、タイミングが合ったときにいかにこの右アッパーを出せるかというのは練習でもずっとやっていました。(指示は)そこで打てということじゃなくて、尚の頭に残しておいてあげればいざというときにスッと出るじゃないですか。まさにそんな感じでした。
──この日、先に登場したのが拓真選手。日本人初の5階級制覇を狙うレジェンド・井岡一翔選手に対し、2度のダウンを奪うなど、完勝でした。昨年11月に勝利した那須川天心選手との試合以降、目を見張るほどの充実ぶりです。
井上 今の拓は、本当に右肩上がりです。昨年、天心選手との試合が決まってからというもの、気持ちの入り方が違います。これまでの拓は拓なりにしっかりやっていても、子供の頃と同じように、自分で限界をつくってしまっていた。頭一つ抜ける存在になるにはもう一歩、二歩上に行く気構えが必要なのに、自分が求めるレベルとの温度差がずっとあって、事あるごとに色々言ってきた。でも、天心戦からは練習からリミッターを外してバンバンやるようになって、最近もあるカメラマンさんから「拓真さんにあんまり言わなくなりましたね」って。そりゃそうですよ。だって言う必要ないくらい、本人がやり切りますから。尚がまさにそうじゃないですか。
