そう指摘するのは英国在住のデズモンド・シャム氏である。シャム氏は温家宝一族の不正蓄財を世界に暴露したことで有名だが、シャム氏の元妻は突然失踪し、その行方は4年にわたって家族でさえ知るすべがなかった(現在、中国国内で暮らしている)。ファーウェイ創業者についても、本人がイベントなどに姿を現しでもしない限り、消息は中国当局以外には知りようがないだろう。タレントをしている次女の姚安娜氏は14日に北京でメディアの前に姿を見せたが、任氏や孟氏が公の場に現れたという情報は本稿執筆時点ではない。

「出入国管理規定」の施行前から、中国の半導体最大手SMICの現在の経営トップは国外に出られなかった(画像出所:SMIC)

 日本人にとっては雲をつかむような話だが、任氏の逃亡説はネット上の与太話と退けられないところもある。火のないところに煙は立たない。特に政府が公式情報をコントロールしている中国においては、噂が重要な示唆をはらんでいることがままあるからだ。

 今回の「種火」はおそらく、中国国務院(日本の内閣に相当)が9月15日に施行した「出入国管理規定」だろう。この規定は、国民の出国に伴う国家安全上のリスク管理を強化するのが狙いで、出入国管理法(2013年施行)の下位法令として施行された。条文では「中国公民が輸出管理などの規定に違反し、国家の産業・技術の安全を害するおそれがある場合、出国を不許可にできる」(第4条)と明確に定めている。

ADVERTISEMENT

「彼は中国から出られない」

 実は中国では新規定の施行前から、中国政府の機微に関わる企業・産業の経営幹部は、自由に出国できない状況だった。その厳しい現実を筆者が垣間見たのは、半導体に関連する取材の中でのことだった。

※この続きでは、中国在住の日本人も出国できない可能性に言及しています。全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア『文藝春秋PLUS』に掲載されています(杉本りうこ「ファーウェイ創業者が失踪? 真偽不明のSNS情報が浮き彫りにする『出られない国・中国』という現実」)。

次のページ 写真ページはこちら